2017 Fiscal Year Research-status Report
「英語コミュニケーション」の自己認識と言語活動の関わりを探る有機的研究
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17K02972
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柴田 美紀 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90310961)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英語コミュニケーション / 日本人英語学習者 / 言語態度 / アイデンティティ / コミュニケーションスタイル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「英語コミュニケーション」に対する偏った自己認識(信条やイメージとしての解釈)が実際の英語コミュニケーション・スタイルやストラテジーにどのように現れるかを検証することである。 平成29年度は文献調査と、パイロットスタディーとしてアンケート調査と英語インタラクションの録音および分析を行った。アンケートの作成は、研究代表者がこれまでに使用したアンケート項目と、カナダのProfessor Gatontonより提供されたアイデンティティ調査のアンケート項目を参考にした。アンケート回答の入力は終了しているが、諸般の事情で分析は2年目の平成30年度前半に行う。 英語インタラクションの調査は、研究代表者が提供している「第二言語習得論」でデータ収集を行った。この講義は日本人と留学生(英語母語話者と非母語話者が混在)が履修しており、教材(論文)および授業は全て英語である。毎回の授業は、グループディスカッションで始まる。課題として次週の授業で扱うトピックを論文で読み、それについて英語でディスカッションする。グループは必ず日本人と留学生が合計3名になるように指示した。録音データは大学院生を研究補助として雇用し文字起こしが終了している。また、日本人学生にはフォローアップインタビューを実施し、録音、文字起こしを行った。 英語インタラクションとフォローアップインタビューのデータは詳細に踏み込んだ分析が必要であるが、これまでの分析結果から、グループディスカッションではメンバーが母語話者、非母語話者に関わらず、日本人学生の発話圧倒的に少ないことが明らかになった。また、インタビューで日本人学生が自身の回答の正否の自信度によって発話するか否かを決めていること、またどのタイミングで発話をするかがわからないことが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
問題点のひとつはアンケート回答の数が予想を大きく下回ったことである。調査の対象は主に共通教育の英語科目を履修する1年次と2年次であったが、アンケートの作成に予想以上に時間を要し、依頼のタイミングを逸したことが理由である。英語インタラクション調査の問題点は、研究代表者が提供する講義で毎回のディスカッションを録音する予定であったが、欠席などの理由で同一人物から継続してデータが収集できなかったことである。3つ目の問題として文字起こしがなかなか進まなかったことである。研究補助員を募ったが、研究代表者が所属する研究科には英語母語話者(英語によるグループディスカッション)や日本語母語話者(日本語によるフォローアップインタビュー)の数が少なく、予想通りに集まらなかったことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はより多くの学生にアンケート調査を行う。平成30年度より共通教育の科目がターム制で実施されることから、第2タームでの実施を予定している。英語科目に限定せず、他の共通教育科目で実施することも視野に入れる。また、研究代表者が提供する講義で再度、英語インタラクションのデータ収集を行う。収集方法について、平成29年度のデータを見せ、談話分析の研究者に相談したところ、ジェスチャーや視線が言語同様に発話のタイミングを対話者に示唆していたり、発言権を譲渡する意志を表していたりするので、コミュニケーションスタイルやストラテジーを総合的に調査するためにはジェスチャーや視線も分析対象とするべきだというコメントをもらった。従って、今回はインタラクションを全て録画する。さらに、トピックについても談話分析の研究者から、授業中のアカデミックな話題だけでなく、個人的な話題、日常的な話題でインタラクションをしてもらうと、スタイルやストラテジーが総合的に分析できるとコメントされた(この点は既に研究計画書にも記載あり)。そこで、今回は授業中のグループディスカッションに加え、教室外で、英語母語話者、非英語母語話者、日本人英語話者に英語インタラクションのタスクを依頼し、データ収集とフォローアップインタビューを行う。研究補助員については、他研究科の大学院生も視野にいれて募集を行う。
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Causes of Carryover |
アンケート回答者数と英語インタラクションのデータの量が計画していたよりも少なかったこと、また、研究補助員の確保が困難であったことが次年度への繰り越しが生じた主な理由である。平成30年度はアンケート回答者数と英語インタラクションのデータが増え、他研究科からも研究補助を募る予定であるので、研究補助員の人件費として使用する。
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