2017 Fiscal Year Research-status Report
異文化間コミュニケーションにおける共感:日本語母語話者と英語母語話者の会話の分析
Project/Area Number |
17K02984
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
山本 綾 昭和女子大学, 国際学部, 専任講師 (10376999)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英語 / 日本人英語学習者 / 共感 / 相互行為 / 語用論 / 談話分析 / 異文化間コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、共感(Empathy)という観点から日本語母語話者と英語母語話者の相互行為を観察・記録し、会話参加者の間で共感がどのように達成されるのか、また、共感的なやりとりとはどのようなものかという点について実証的に明らかにすることを目指す。1.会話資料を収集しデータベース化する、2.言語行動や談話構造について分析する、という2つの柱を立て3カ年の計画で進めている。初年度は、主に以下の2点に取り組んだ。 1.資料収集:今年度の前半は、会話の資料を収集することに重点を置いた。比較的自然な状況で、会話の相手に対して共感を示したり、相手から共感を引き出したりするやりとりをとらえることをねらいとした。3~4名からなる小集団に雑談を行ってもらい、その模様を映像と音声で記録した。結果として、のべ39人、約280分間の会話を記録することができた。 2.分析:今年度の後半は、収集した会話資料の整理・文字化作業と並行して、既存の資料を用いて調査を行った。話しことばコーパス(NICT JLE Corpus)に収録されている二者間会話からロールプレイの部分を用い、日本語-英語接触場面におけるやりとりに焦点をあてた。「あるトラブルが発生し問題解決のために他者に協力を要請する」という状況で、日本語母語話者と英語母語話者がどのように他者から共感を引き出そうと試みるのかについて探った。その結果、日本語母語話者と英語母語話者それぞれの用いる方略について、共通点と相違点が明らかになった。また、日本語母語話者の英語スピーキング能力と方略のバリエーションの関係について示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.会話資料の収集、2.分析とも当初の計画に沿って進められたといえる。 1.会話資料の収集については、当初の見込み人数を上回る協力者が得られたため、想定していたよりも大きな規模の一次資料を得ることができた。次の作業工程は文字起こし・データベース化であるが、それはまだ完了していない。本研究の計画立案の時点からこの工程にはある程度の時間がかかると予想しており、次年度前半にかけて引き続き取り組んでいく。 2.分析については既存のコーパスを利用して調査を行った。上記1と並行して進めることにより、会話資料の収集・データベース化の完了を待たずに研究を進めることが可能となった。結果として、初年度のうちに学会発表のかたちで成果を1件まとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って進めていく。まずは、初年度に収集した会話資料の文字化・データベース化を完了させる。次に、英語母語話者の会話資料の拡充にむけて準備を進める。 また、既に着手している分析を進展させる。会話の相手から共感を引き出す言語行動だけでなく、会話の相手に共感を示す言語行動や共感に至るまでの談話の構造などについて検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は会話資料の収集にあたり撮影・録音機材の購入を予定していた。効率的な日程と場所を設定できたので、予定より若干少ない数の機材で実施することが可能となった。そのため、物品費として計上していた一部を次年度に繰越すこととなった。 次年度以降は、会話資料の整備、分析、成果報告という3つの用途を中心に謝金・人件費、物品費、旅費を使用する。謝金・人件費は、主に会話資料の文字起こし・データベース化を完了させるために使用する。追加資料の収集にも用いる。物品費は、映像・音声の分析に用いるパソコンや記録媒体などを購入する予定である。また、分析方法を検討したり言語学やコミュニケーション研究、隣接・関連する分野の研究動向を把握したりする目的で、文献の入手にも充てる。旅費は、学会に参加し成果発表や意見交換を行うために用いる。
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Research Products
(3 results)