2017 Fiscal Year Research-status Report
A study on interpreters and interpreting in wartime language policy and war crimes, drawing on class B/C war crimes trials against the Japanese
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17K02988
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
武田 珂代子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (60625804)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 戦時通訳者 / BC級戦犯裁判 / 法廷通訳 / 裁判の証人 / 日本語言語官の養成 / 対日諜報活動 / 第二次世界大戦 / 日本語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. BC級戦犯裁判で戦時通訳者が被告人または証人となった事例の洗い出し まず、BC級戦犯裁判の中で、資料が入手可能なものに関して、被告人の肩書きが「通訳」となっている裁判のリストを作成した。ただし、裁判記録を読むと、被告人の肩書きが「通訳」と明示されてなくとも、通訳業務中の行為に基づいて起訴された事例が見つかった。また、通訳者が裁判の証人となる事例は、個々の裁判記録を読まない限り浮かび上がらない。そこで、有罪判決を受けた通訳者の数が最も多い英軍戦犯裁判に焦点を当て、被告人となった戦時通訳者の氏名、出身地、罪状、履歴を示すリストを作成した。日本名を使用した台湾出身の労務者で通訳業務を行った被告人の情報については、研究協力者のShi-chi Mike Lan氏と共同で整理した。 2. 戦時中の対日諜報要員の養成と活動についての調査 連合軍による日本語言語官の養成と対日諜報活動について、カナダの日系文化センター、豪国立公文書館、米国防語学学校図書館、フーヴァー研究所などで調査を行い、有益な情報が得られた。特に、各軍組織の日本語学校で使用された教科書や試験を調査できたことは大きな収穫だった。また、日本語言語官や日系人に対する各国の方針や態度に違いがあったこと、日本から引揚げた外国人宣教師らが連合軍の対日諜報活動で重要な役割を果たしたことなど新たな発見ができた。 3. 本研究の成果発信および研究協力者との研究会 本研究の暫定的な成果を招聘講演、米国、オーストラリア、英国の学会やワークショップで発表した。その際得られた参加者からのフィードバックを参考にしながら、研究を進めている。特に、「戦犯としての通訳者」「日系人通訳者の多様性」といったトピックが関心が呼んだ。研究協力者とは、立教大学での研究会、Eメールやスカイプ、また学会やワークショップの場で情報共有および意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.29年度は、①BC級戦犯裁判で被告人や証人となった戦時通訳者とその裁判の法廷通訳者に関する情報の収集整理、②戦中のカナダ、オーストラリア、米国による日本語言語官の養成と諜報活動に関する調査、③①と②の研究活動の成果に関する研究協力者との討議を行う計画だった。②と③は当初の計画以上に進展したが、①は、当該裁判が初期調査で把握していた件数よりもはるかに多く、調査範囲の調整を行ったため、当初の計画よりやや遅れている。全体としては「おおむね順調に進展」という評価である。 2.特に成果があがった点 豪国立公文書館、カナダの日系文化センター、米フーヴァー研究所などで、各軍日本語学校の設置と運営、教科書や試験などの資料を収集した。その分析をもとに、英国、米国、オーストラリアの学会で研究発表を行った。参加者のコメントを参照しながら、論文(30年 4月出版)と書籍(30年8月出版予定)を執筆したほか、台湾や香港で講演を行った。研究協力者のLan氏とは、日本と台湾で、またオンラインで本研究について討議し、台湾人通訳者に関する情報整理などをした。Totani氏とはフーヴァー研究所で、Kushner氏とTrefalt氏とはオンラインで、Ling氏とは立教大学で通訳者の罪状や日本語言語官の背景を中心に討議した。 3.やや遅れている点 ①については、まず、BC級戦犯裁判の中で被告人が「通訳」とされる裁判のリストを作成した。しかし、被告人の肩書きが「通訳」と明示されてなくとも、通訳業務中の行為に基づいて起訴された事例があり、また、通訳者が裁判の証人となる事例は、個々の裁判記録を読まない限り確認できない。そこで、英軍戦犯裁判に焦点を当て、被告人となった戦時通訳者の氏名、出身地、罪状、履歴を示すリストを作成した。証人としての通訳者のリストが完成していないという点で、当初の予定よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
BC級戦犯裁判の事例に基づき、「戦争と言語」という主題について包括的な考察を行うという本研究の目的達成に向け、29年度の成果と課題をもとに、30年度は以下の項目に焦点を当てた研究活動に取り組み、最終年(31年度)での総括につなげていく。 1.戦中の英国における日本語言語官の動員、養成、活動に関する調査:ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)、ケンブリッジ大学、英国公文書館などで英軍による戦中日本語学校の設置過程と運営、訓練生の背景、訓練の内容、教科書、卒業後の活動などに関する資料を収集し、29年度に収集した米軍、豪軍、カナダ軍に関する同様の調査に照らして、比較検討する。 2.英軍戦犯裁判で通訳者が被告人となった事例の整理と分析:29年度の調査によって、連合国によるBC級戦犯裁判で英軍が最も多くの通訳者に有罪判決を下したことが確認できた。30年度は英軍戦犯裁判に焦点を置き、29年度に作成した該当英軍裁判のリストに、証人となった戦時通訳者や裁判時の法廷通訳者に関する情報などを加えるともに、罪状と通訳者の背景(出身地や経歴など)を中心に分析を続ける。 3.「通訳行為は戦争犯罪になりうるか」に関する検討:フーヴァー研究所やケンブリッジ大学などで、国際法や国際政治の専門家と「拷問を通訳することは戦争犯罪か」といった戦時通訳者の責任問題と倫理に関する課題について討議を進める。 4.研究協力者との討議と学会などでの研究発表:立教大学、ケンブリッジ大学、SOAS、フーヴァー研究所、また海外の学会において、さらにEメールやスカイプで研究協力者との討議を重ねていく。特に、罪状の内容と裁判の証人としての戦時通訳者という点に焦点を当てる。30年5月にドイツで本研究に関する招聘研究発表を行うほか、主に英国その他ヨーロッパ諸国の学会やワークショップで本研究の成果を随時発表し、論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
適切なリサーチアシスタントを見つけることができなかったため、人件費の支出が当初の予定よりも少額となり調整を行う必要があり、少額の残金が発生した。残額は書籍などの物品費にあてる。
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Research Products
(16 results)
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[Book] Japanese War Criminals2017
Author(s)
Wilson, S., Cribb, R., Trefalt, B., and Aszkielowicz, D.
Total Pages
417
Publisher
Columbia University Press
ISBN
978-0-231-17922-5