2017 Fiscal Year Research-status Report
英語を話す意欲を向上させる条件 -日本語使用に焦点を当てて-
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17K02990
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
今野 勝幸 静岡理工科大学, 情報学部, 講師 (00636970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 篤美 神田外語大学, 言語教育コンサルタントセンター, 講師 (10749469)
古賀 功 東海大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90528754)
TWEED Andrew 神田外語大学, 言語教育コンサルタントセンター, 講師 (30788823)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | WTC / 英語会話意欲 / 動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、日本人英語学習者の会話意欲(WTC)に影響を与える要因を明らかにする研究の一部として、これまで動機づけ研究において提案されてきたWTCのモデルを元に、主に量的な研究を行った。まず大学生を対象としたアンケートによる調査結果の分析を行った。結果として、WTCの直接的な影響要因として想定されてきた「自信」と「不安」が以外に、教師からの支援に対する認知を中心とした「環境」という要因もWTCへの有力な影響要因として認められた。これらのことから、日本人英語学習者のWTCを高めるには、周囲からの支援による安心感も重要であることが示された。 次に、英語の授業を英語で行った場合と、日本語で行った場合とで、大学生のWTCや動機づけ要因の変化に違いが見られるのかどうかを比較した。英語指導群と日本語指導群を比較した結果、予想に反して後者に属する学習者のWTCに有意な向上が見られた。授業では英語のアウトプット活動が中心であったが、日本語指導群では日本語の使用が制限されなかった。これまでの動機づけの理論に照らし合わせると、使用言語の選択の余地を与えられることが、英語を使おうとする意欲に影響する可能性が示唆された。 加えて、日本人教師が英語を使って英語を指導した場合と、英語母語話者の教師が英語を使って指導した場合で、日本人英語学習者のWTCにどのような影響が及ぼされるのかについても検証を行った。結果として、英語母語話者が英語で指導した場合にWTCの有意な向上が見られた一方、日本人教師が英語で指導を行ったからといってWTCが低下するわけでないことが確認された。 これらの結果を考慮すると、英語を使って英語の指導を行う場合、困難が生じたときには日本語の使用を制限せず、言語を柔軟に使い分けて適切な支援を与えることは、日本人英語学習者のWTCに良い影響を与える可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度の研究では、日本人英語学習者が英語で会話をしている際のWTCの変動を調査し、量的な分析のみならず質的な分析も援用してどのような理由でWTCに変動が生じたのかを明らかにすることを主な目的としている。そして2017年度の研究成果を踏まえた上で、例えばWTCが低下した場合に、どのような支援を行うべきか、そしてどのような状況でどのように日本語を使用すればよいのかについて更なる示唆を得ることが目的であった。 本研究では、どのような日本人学習者を対象とするのかが重要な問題である。今年度の研究では、英語での会話中のWTCの変動を分析するため、日本人学習者と英語母語話者、もしくは日本人英語教員との一対一での会話の様子を記録する必要がある。普段英語を使う機会が少ない日本人学習者がこのような状況での英会話を要求されると、それはある種の授業で行われるような「課題」として捉えられ、自らのWTCの高さに関わらず英語を話すことを強制される形となってしまう恐れがある。WTCの定義は「話すか話さないか選択できる状況で、あえて話そうとする意思」である。これを考慮すると、このような英語を話すことがある意味強制される状況では、正しくWTCを捉えられない可能性がある。そのため、普段英語を話す機会が豊富にあり、対面者とも認識がある学習者に協力を依頼することで上記の問題を解決できると考えた。 研究分担者の現所属機関が研究環境として上記の条件に合致しており、それに応じた研究計画を立てていた。しかしながら、研究代表者の異動や、分担者の所属機関との契約条件などの問題により、その機関での研究が困難になるという問題に直面している。これにより、現在は、新たな研究環境の模索と、研究計画の若干の見直しを行い、研究の継続ができるように進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の主な研究目的は、日本人英語学習者の英会話中のWTCの変動を分析し、その原因を検証することである。しかしながら、研究の実施機関の変更と、研究計画の見直しを迫られている。それらを踏まえた上で、現段階では次のように進めることを計画している。 研究の実施機関の変更が強いられたことは、現在直面している困難の中で最も大きいものであるといえる。しかし、これについては、現在のところ、研究代表者の異動先が候補の1つとして挙げられている。もともと研究の実施を計画していた機関の環境とは異なるが、類似した環境が存在している。その環境での研究協力の依頼を現在検討している。また、研究分担者の前所属機関は、もともと研究の実施を計画していた環境と同等以上の環境を有しており、研究協力についても前向きである。研究実施者の移動や、研究協力者や実施場所の確保に難しさが存在するが、研究実施環境の候補の1つとして検討している。これらのことから、研究実施機関については問題が解決できると考えており、この問題が解消することにより研究はスムーズに進むと考えられる。 上記の問題を解決した上で、次のように研究を進める予定である。研究1として、2名から4名の協力者を募り、日本人と英語母語話者との英会話における、WTCの変動を観測する。会話内容をもとにした事後インタビューにより、変動とその原因を分析する。その結果をもとにWTCが低下する状況と原因を把握した上で、研究2として、更に6名から10名の協力者を募り、そのような原因に対して日本語を使用して支援した場合と、英語で支援した場合を比較し、日本語での支援の効果を検証する。研究環境の変更に伴い、もともと予定していた長期的な視野に立ち、特性的なWTCの向上を図るという計画を若干変更し、今年度は状況的なWTCの向上を目指した研究に絞る予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては次の3つが挙げられる。まず、研究協力者への謝礼金の支払いを予定していたが、協力者の変更、及び厚意によりそれが不要になったこと、次に、出版費として研究投稿論文の印刷費を予定していたが、残念ながらそれが不採択になってしまったこと、そして、研究従事者の努力により、予定していた物品を購入せずに研究を進めることができたため、である。 前述の通り、様々な理由により今年度の研究実施場所の変更が強いられている。当初は、研究分担者の所属機関で、研究分担者が今年度の調査を実施する予定であった。しかし、実施場所の変更に伴い、研究分担者が調査実施のため、移動する必要が生じている。また、研究の特性上、1度の調査では追われないため、その移動は複数回に及ぶ。また、変更後の実施環境では、新たな研究協力者に協力を依頼する必要がある。そのため、謝礼の支払いが生じると予想される。従って、今年度に持ち越された研究費は、研究分担者が調査を実施するための旅費と、新たに生じるであろう、謝礼金に充てる予定である。
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