2018 Fiscal Year Research-status Report
英語を話す意欲を向上させる条件 -日本語使用に焦点を当てて-
Project/Area Number |
17K02990
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
今野 勝幸 龍谷大学, 社会学部, 講師 (00636970)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 篤美 神田外語大学, 言語教育コンサルタントセンター, 講師 (10749469)
古賀 功 東海大学, 国際教育センター, 准教授 (90528754)
TWEED Andrew 神田外語大学, 言語教育コンサルタントセンター, 講師 (30788823)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 会話意欲 / WTC / 動機づけ / 複雑性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、英語で会話を行っている最中の日本人英語学習者の会話意欲の変動を検証し、その変動に与える要因を明らかにするために調査研究を行った。本研究では大学生日本人英語学習者10名を対象に、英語での会話中の意欲の変動を捉えるために、会話の直後に行う刺激回想法と、それを更に振り返りながら行う後向きインタビューという2種類のインタビューを行った。研究協力者は初対面の英語母語話者、もしくは英語を話す日本人と10分間の英会話を行った。出身地や将来の夢など、知識の差などによる影響を受けないトピックを用意し、それらに基づいて会話が進められた。会話の様子は録音・撮影され、会話の直後にその映像を見ながら、その時々の意欲を協力者自身が評価を行った(刺激回想法)。そして、その直後に特に特徴的な評価の変動が見られた箇所を中心に、映像を見ながらそのときの様子を協力者に振り返ってもらった(後向きインタビュー)。1回の調査にはおおよそ90分ほどの時間を要した。その後、これらのインタビューで得られたデータから、変動に影響した要因を検証した。 結果として、全体を通して意欲が高まる場面では英語の表出量が増える傾向が見られる一方、必ずしもそうではない場合も見られた。例えば、トピックによっては、学習者はどう伝えればいいのかが分からず不安である時でも高い英語の表出量を保つことがある場合や、自分の答えや考えが定まらないような、積極的には好まない話題の場合は会話意欲が低くなるものの、言葉を捻出する場合もあることがわかった。これまでの先行研究から不安が低く、自信が高い場合に会話意欲が高まる、というモデルが前提とされてきたが、本研究の結果は、実際の英語での会話においては必ずしもそのモデルが当てはまらない可能性が確認された。本研究の成果は、2019年度に3つの国際学会で発表することが決まっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況としては、計画よりも若干の遅れが生じていると言える。まず、当初から計画をしていた研究分担者が所属する大学での調査が、その後の協議によって実施不能になってしまったことが要因の1つとして挙げられる。そのため、調査を実施するための環境を新たに確保する必要に迫られた。幸い、別な大学で調査が可能となったものの、研究の実施にあたり研究倫理委員会の審査が再度必要となり、また、遠隔地であるため協力者の確保にも時間を要することになった。加えて、その場所に行って調査を行うための調査者のスケジュールも再度調整する必要があり、調査の実施が後ろ倒しになってしまった経緯がある。しかし、調査実施場所の変更が決まってからは手続きがスムーズに進んだため、当時の状況からは予想できないほど研究を進めることができた。更に、当初は予定をしていなかった大学でも参加者を募り、調査を行うことができたため、それまでの遅れをカバーしつつ、3つの国際学会で研究成果を発表するための見通しがつくほどの研究成果を収めることができた。当初の研究計画の7割程度は消化することができたと言える。ただ、前年度に行った研究成果をまとめた投稿論文が不採択になってしまったことは非常に残念であった。今年度は、既に発表が決まっている国際学会で発表するためのデータ分析を継続し、それらを投稿論文としてまとめつつ、不採択となった論文の修正を行い、再度投稿したいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、上記で説明したように、調査の開始が後ろ倒しになってしまったことから、収集したデータの分析に少々の遅れが生じてしまっている。ある程度の研究成果は得られているものの、全てのデータ分析が完了したわけではないため、まずは、前年度に収集したデータの分析を完了させることが今年度の第1の研究目標となる。また、調査を行う環境の変更も余儀なくされたため、調査の対象者の変更に伴う調査の内容にも微調整を加えることが必要となった。研究1年目と2年目の成果、そして調査対象者の変更を踏まえた上で、3年目である今年度は、日本語の使用が会話意欲に与える影響に焦点を当てて研究を行いたい。例えば、1年目の研究では、英語での会話を行う場合でも、英語の使用が強要されず、日本語の使用が許容される環境のほうが英語での会話意欲を高める可能性が示唆された。一方、2年目の研究では、英語での会話の最中には、特に日本語の使用や日本語によるサポートは不要であるとの意見が得られた。2年目の研究手法を踏襲しながら、条件を変更し、日本語使用の有無による会話意欲の変動を検証することが3年目の目標となる。
|
Causes of Carryover |
調査実施箇所が変更になるなど、2年目の研究には若干の遅れと変更が生じてしまったため、使用する金額にも変更が生じることになった。まず、調査実施箇所が変更になったため、研究計画の日程が変更されたことにより計画していた出張が中止となり、研究分担者が当初必要としていた旅費の分が使用されないことになった。更に、調査実施の後ろ倒しにより、一部のデータ分析が年度をまたいでしまうことになったことも、データ分析に必要としていた予算を繰り越すことにつながった。また、研究計画の微調整により新年度に収集するデータが増えることもあり、当初よりも分析に要する支出が増える可能性があるため、繰り越しを申請することになった。
|
Research Products
(3 results)