2021 Fiscal Year Research-status Report
英語学習者によるフォーカス・オン・フォームのメカニズム解明と学習活動の開発研究
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17K02996
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
名部井 敏代 関西大学, 外国語学部, 教授 (20368187)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉澤 清美 関西大学, 外国語学部, 教授 (80210665)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォーカス・オン・フォーム / ランゲージング / メタ言語的意識の高揚 / 社会文化理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主にリーディング活動における英語学習者による自律的なフォーカス・オン・フォームのメカニズムを解明し、読解力を向上させる効果的な指導・学習活動の開発を目的として始められた。言語の三要素(形式・意味・機能)のバランスを取りつつ、自らのL2運用能力向上に結びつける「注意の払い方」としてのフォーカス・オン・フォームのメカニズムを解明し、その知見を活かした指導法・学習活動の提案を行うことを目標としている。 アウトプット活動(ライティング活動)を伴う活動でライティング導入される指導的介入(フィードバック)が言語的要素だけでなく意味伝達の効果的なモデル提示に出会った場合、学習者の言語に向けた注意がより高まり、その後のパフォーマンスに向上が見られることを明らかにすることができた。 アウトプットを伴わないリーディング活動中の学習者のメタ言語的注意・意識のありようを理解する一つの手段として、インプット強化が行われた読み物と平板な読み物で読解中の意識を探る調査を行った。この小規模なアンケート形式の調査では、先行研究ですでに明らかになっている、読み物のインプット強化の箇所に注意が向く傾向が高いという結果が支持された。平板な読み物ではメタ言語的注意・意識が喚起されにくい理由や喚起されたメタ言語的注意・意識により学習者が読みの活動を言語学習に役立てる可能性に関わる調査手法の確立という課題が明らかになった。 なお、共同研究者・吉澤清美は、英語学習者のリーディング活動に関連して、学習者の英語の読みのレベル測定に関する研究を行い、Extensive Reading Placement/Progress Test (EPER_ppt)の、読みのレベル測定ツールとしての妥当性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者は、2020年度に引き続き2021年度も新型コロナウイルス感染症のため、学内業務の遂行に多くの時間がとられ、研究に割ける時間が全くなかった。また、2021年度も春学期期間は遠隔授業が行われ、異なる教育環境下での研究調査の修正案ができていなかったため、リーディング授業での研究調査は対面授業が可能になった秋学期まで延期されることになった。以上の理由から、研究は大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、主にリーディング活動における英語学習者による自律的なフォーカス・オン・フォームのメカニズムを解明し、読解力を向上させる効果的な指導・学習活動の開発を目的として始められた。言語の三要素(形式・意味・機能)のバランスを取りつつ、自らのL2運用能力向上に結びつける「注意の払い方」としてのフォーカス・オン・フォームのメカニズムを解明し、その知見を活かした指導法・学習活動の提案を行うことを目標としてきた。しかし、現在は、コロナ禍の影響で研究調査が滞っている状況である。また、これまでの調査から、理論的枠組みにも問題があることが明らかになってきた。そのため、最初の計画を大幅に修正する必要があると考える。 まず理論的枠組みについて、当初の計画に掲げていた「リーディング授業」の概念には「リーディング技能」と「リーディング素材を用いる教育実践活動」2つが混在しており、整理区別できていなかったことが明らかになった。今後は「リーディング素材を用いる教育実践活動」に焦点をあて「学習活動」を分析単位にする研究調査方針に変更していきたい。2022年度は社会文化理論や活動理論を積極的に用いて、学習活動中の学習者の自律的なメタ言語的注意と意識を理解する調査を行っていく。 次に、当初掲げていた指導法提案という最終研究目標を、学習者の自律的メタ言語的注意の発現や意識の高揚の仕組みを事例研究的立場での事例提示に変更する。特定の学習者群への効果的な指導モデルを提案するという当初の考えは、感染症の影響による授業形態の多様化が進む現状では対応が難しい。むしろ、多様化が進む教育現場でそれぞれのケースで参照できるような個別事例の収集が有益だと考える。活動理論を含む社会文化理論の枠組み、学習者の自律的メタ言語的注意や意識が起こり高まる仕組みの事例を系統立てて整理し提示することを目標に本研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のため、計画通り研究が遂行できず、助成金も使用できなかった。 2022年度は、修正した課題のもと追加・補足データを収集・分析し、その結果の論文発表を行う計画である。ついては、2022年度に生じた使用額は、(1)データ収集に関わる謝金、(2)分析補助の大学院生アルバイト謝金、(3)論文執筆校正謝金、さらに、(4)必要な消耗物品・書籍の購入に用いる計画である。
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Research Products
(1 results)