2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K02999
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
木津 弥佳 (田中) ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (00759037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
行木 瑛子 国際教養大学, 国際教養学部, 助教 (40781208)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 第二言語語用論 / study abroad / 終助詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開始から2年目にあたる平成30年度は、すでにデータ収集が完了しているJFL(英語母語の日本語学習者:計10名)の詳細な分析を行い、研究論文を国内外の複数の学会で発表した他、国際学術誌に論文を投稿(令和元年5月に掲載)するなど、研究成果を形にすることができた。また、EFL(日本語母語の英語学習者:計11名)のインタビューデータの収集を全て終了させ、そのデータをもとにコード化と分析を始めた。研究成果として、EFLに関する予備的な研究結果をもとに執筆した論文要旨が国際学会で採択された(令和元年5月に発表予定)。 このような成果の背景には、海外共同研究者が来日し、複数回にわたって研究代表者、研究分担者と共に密な研究会を開催することができたこと、またそれによりデータを様々な観点から詳細に分析し、議論の可能性を追求する機会を得られたことが大きい。特に、JFLの発話に見られる終助詞「ね」の使用について、その使用頻度からJFLには二つの種類の学習者群に分けられ、それぞれの学習者群に「ね」の使用に関する特徴が見られることがわかった。 EFLについては、研究分担者の所属校で英語圏(米国、カナダ、英国、アイルランド)の大学へ留学したEFL11名を対象に、3回目(留学直後)と4回目(留学半年後)のインタビューとアンケート調査、スピーキングの能力テストを行った。また、第二言語学習者と母語話者との比較のため、英語母語話者10名を対象にEFLと同様の半構造的インタビューを行った。これによりすべてのEFLデータ収集が完了し、本年後半では、リサーチアシスタント等に依頼して、インタビューデータの文字化とEFLの発話部分のコード化・分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JFLに関しては、書き起こしデータを再度音声と照らし合わせながら、さらに詳細なコード化を行い、そのうち相互行為能力や談話の構築という観点に重要な役割を果たしている終助詞「ね」の使用に絞って、使用と習得の変化に着目した研究を行った。量的分析としては、全体の発話量(節の数)からみた終助詞「ね」の割合を統計的に算出し、「ね」の頻度によって学習者を二つのグループに分類した。二つの学習者群とアンケート調査の結果の相関関係を探り、いくつかの要因が「ね」の頻度に影響を与えていることがわかった。質的分析では、JFL10名のデータの中でも、各学習者群から比較対象となりうる2名学習者のデータに焦点を当て、留学前、留学中、留学直後、留学半年後の4段階で使用された「ね」の談話的意味機能を全て分析し、それぞれがどのような「ね」の使い方をしているかを詳細に調べた。これらの成果はTeaching and Learning L2 Pragmatics(国際学会)と第6回秋田日本語教育研究会で発表し、他大学の研究者から有益なコメントを得ることができた。それらのコメントも踏まえて研究論文にまとめ、Journal of East Asian Pragmaticsに投稿・採択された。 EFLについては、予定どおり3回目と4回目のインタビューを行った。また、共同研究者、研究分担者との議論の過程で、英語母語話者のデータ収集も必要であることが分かったため、英語母語話者10名を対象としたインタビューも行い、必要なデータを収集した。以上のようにすべて予定どおり順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度からは新たに国際教養大学のPatrick Dougherty教授を研究分担者に迎え、英語母語話者から見たEFLデータの分析も進めていく。具体的に予定している成果としては、EFL予備調査の結果をまとめた研究論文を国際会議 (the 16th International Pragmatics Conference;6月に香港で開催)でポスター発表する他、秋田JALT研究会でも口頭発表を行う予定である。分析や主張点に必要となる関連する研究・発表論文を整理し、理論的基礎を固めていくとともに、より詳細な量的・質的分析を試みる。成果として、学会発表や論文の執筆、学術誌への投稿を予定している。 また、JFLデータから終助詞「ね」以外の形式を取り上げ、より包括的な観察と分析を行っていく。質的分析をさらに深く行う必要があるため、研究分担者ならびに海外共同研究者と共にデータを再調査し、海外の出版社に向けて著書出版の企画書を提出することを目標とする。 上記の研究活動に加え、研究分担者らとともにEFLデータとJFLのデータの比較分析を行うことで、平成31年度以降の研究の方向性を探っていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は消耗図書購入がなかったことと、国内外の学会発表で代表研究者か共同研究者のいずれか1名しか出席できなかったことにより、物品費と旅費の使用が限られていた。その代わりに、EFLデータの収集が完了したことで、インタビューの書き起こしやコード化などリサーチアシスタントに依頼する仕事が増え、予定よりも支出が謝金等に生じた。このような結果、次年度使用額は97,873円となったが、次年度は成果発表を積極的に行っていく年であるので、学会参加費や旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)