2017 Fiscal Year Research-status Report
L2 English grammar development of false beginners in an extensive reading program: A dynamic usage-based approach
Project/Area Number |
17K03000
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
戸出 朋子 広島修道大学, 人文学部, 教授 (00410259)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 英語基本構文 / 動的用法基盤言語発達 / 多読 / 主語の習得 |
Outline of Annual Research Achievements |
英語基本構造がほとんど身についていない高校生や大学生が少なくないことが,深刻な問題となっている。これは,英語と類型的に異なる日本語の影響で主語の習得が困難であることが関係しており,下位層の生徒にとって英語基本構造の学習は容易ではない。一方,多読が学習者の文法能力を促進することが示され始めている。多読の文法能力促進における効果は,用法基盤言語学に依拠する習得理論,すなわち「言語は意味と形がつながったユニットであり,個々の状況の中で具体事例をユニットとして処理しそれを繰り返す中で,文法が事例基盤で創発する」という考え方と照らし合わせても理にかなっている。本研究の目的を,多読に取り組む学習者の英語基本構文の発達の様を用法基盤言語習得の枠組みで縦断的に研究することとした。 平成29年度は,目的達成への第一段階として,研究代表者が英語教育のメンターとして関わっている研究協力校の英語クラスで多読指導を年間に亘って行った。この指導では,1単位時間を,1)全体読書,2) 個別多読,3) 個別産出の流れで,動的用法基盤アプローチの指導原則(入力理解,繰り返し,意識高揚,発音,少しの産出活動)に従い,次の流れで指導を行った。1) 教師が週単位で本を1冊選び,読み聞かせた。2) 生徒が自分で本を選び,個別読書を行い多読記録に記録した。次に読んだ本の音声を聞き,それを参考にして,音読した。3)さらに週1回のペースで授業終了10分前に言語のない5コマの絵よりなるストーリーを提示し,8分間でストーリー筆記をさせた。構文習得を検証するためのデータとして,容認性判断テスト(開始時と年度末に実施)と3)の個別ストーリー筆記を収集した。そして,学習者の言語経験を知るため多読記録もデータとして収集した。平成30年度は,引き続き指導及びデータ収集を行うとともに,言語経験と文法発達の関係を縦断的に分析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定として,平成29年度は,研究協力校で年間に亘ってデータ収集を行うこととしていた。予定通り,多読記録,ストーリー筆記データ,文法性容認テストデータを収集することができた。また,研究者は週1回ほぼ欠かさず教室訪問による観察を行い,実際に指導する教師との連携も密に行えたので,そういった意味でも順調に遂行できていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度で収集したデータの分析を行う。分析は,まず,開始時と学年末で英語基本構文習得(容認性判断テストの得点とストーリー筆記における「一動詞当たりの項数の平均値」の得点)が有意に伸びたかどうかを検証する。そして,その得点の増加が多読した語数と関係があるかを調べる。 また,一年間という指導期間の構文発達の過程を見るために,用法基盤アプローチと親和性のある複雑性理論の枠組みで,ストーリー筆記における産出の変化を変異性という観点で調べる。複雑性理論では,言語の変異を,発達を知る上で重要な情報とみなす。節を産出するとき,様々な変種(例えば,日本語の影響を受けていると思われる主語のない節[例,Next played badminton]やかなり発達した段階に習得される代名詞を使った節[例,He played badminton]が表れるが,それぞれの変種の相対的な使用率の個人内での変化をプロットする。そうすることによって,日本語の影響を受けていると思われる初期段階の文法と目標文法がどのように競合しながら変化していくのかという軌跡を個人ごとに分析する。 これらの分析と並行して,平成30年度も引き続き平成29年度と同様にデータ収集を行う。
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Causes of Carryover |
当初,米国での国際学会参加を見通して計画をたてていたが,現段階での参加は尚早であると判断し見送った。2018年度はアメリカ応用言語学会で発表することを目標に分析を進めている。また,分析においてベースラインデータとして英語母語話者からストーリー筆記データを収集する必要があり,その謝金にも充てる予定である。
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