2017 Fiscal Year Research-status Report
学習者特性に応じた自己調整学習力の強化のための介入方法の検討
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17K03027
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
吉田 国子 東京都市大学, 共通教育部, 教授 (40298021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 貴之 清和大学, 法学部, 准教授 (40383468)
南津 佳広 大阪電気通信大学, 工学部, 准教授 (70616292)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自己調整学習 / 学習者特性 / 自己調整アンケート / 5因子モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自己調整学習が困難な英語学習者を学習者特性別に類型化し、学習者による継続的な学習記録の記述と教員のそれへの介入を通して、学習者特性に応じた支援方法を提言することにある。本研究に先立って、本研究者らは「自己調整学習を促すきっかけづくりのための基礎研究」(基盤(C)2670744)を行い、学習者自身の学習の振り返りである「学習記録」の記述を精緻化させることで、自己調整学習を促すことが可能であるという結果を得た。しかし、基礎研究では、学習記録の精緻化と学習成績との関連が明らかではなく、学習記録の記載内容が、学習者特性や学習者のサブカルチャーに左右されるため、一律の介入では効果が限定的になってしまうことが問題点であった。 そこで本研究では、学習者の特性に応じた介入方法を検討することを目的とした。第一段階として、29年度は学習成果および学習過程に影響を及ぼすとされる学習者特性要素を先行研究より抽出した。本研究は英語教育に特化しているが、教科の枠を超えて教育心理学研究およびパーソナリティーと学習に関する研究もその調査対象とした。その結果、Goldberg, D. P.によるパーソナリティ5因子(Big Five)すなわち、開放性(Openness),誠実性(Conscientiousness)、外向性(Extraversion)、協調性(Agreeableness)、情緒安定性(Neuroticism)のうち、特に、協調性は教師の指示に素直に従い、学習活動に従事すること、誠実性は学習を遂行するための動機づけや目標設定、注意の焦点化、時間調整、情緒安定性は自己効力感、外向性は学習に取り組む熱意、開放性は新しい学習を受け入れることや、批判的思考に関わっていると示唆されており、特に最新の研究では、誠実性が学習の成否に大きくかかわる要素であると考えられていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究着手以前に行っていた基礎研究において、学習者のインタビューを予定していたが、インタビュー先の都合により、実施が延期となった、その結果、基礎研究の完成が1年ずれ込むこととなり、それに伴って、本研究の開始自体が遅れることとなった。本研究は、基礎研究を発展させたものであり、基礎研究で得られた知見を十分に利用するためには、基礎研究の完成を優先させることが重要であると判断し、このような進捗状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度に行った先行研究検討から、パーソナリティ5特性のなかでも特に誠実性が学習の成否と大きく関わるとされていることがわかった。しかしながら、同時に多くの研究が他の4要素も学習とは密接な関係があることを示しており、パーソナリティー研究の結果のみから学習者を類型化するには限界があることがわかった。そこで、本年度は学習者のパーソナリティー傾向を把握するために5特性の調査を行った上で、さらに自己調整に特化したアンケート調査を実施して、パーソナリティー傾向と自己調整学習傾向の相関を見出し、そこから学習者の類型化を試みる。その上で、学習者が記載する学習記録の内容を学習者傾向に沿って分類する。 具体的には、Brown et al.によって開発された全63項目からなるSelf-Regulation Questionnaire (SRQ)への回答を学習者に求め、全体としての自己調整度、自己調整学習の各段階における自己調整度の2つの側面からデータを分析し、学習記録の分析結果との関連を調査する。
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Causes of Carryover |
本研究の基礎研究として行った「自己調整学習を促すきっかけづくりのための基礎研究」(基盤(C)2670744)の完成が遅れたため、それに伴って本研究の開始が遅れることとなった。30年度は、改めて本研究の開始初年度と位置づけ、下記の計画に従って使用していく。 1.研究分担者との打ち合わせおよび自己調整度アンケートを各大学にて実施する。(旅費)2.並行してテキストマイニングソフトにより学習記録データの分析を行う。(データ分析のための補助要員人件費およびアプリケーション等の物品費)3.特徴的な記載のある学習記録者へのインタビュー調査(旅費および謝金、データ分析補助要員人件費)4.学会における成果発表(旅費および論文投稿にかかる費用)
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