2019 Fiscal Year Research-status Report
英語論文執筆における学習者のスタンス表明―機能言語学の知見を利用して―
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17K03040
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
川西 慧 武庫川女子大学, 文学部, 講師 (10779242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇佐美 彰規 武庫川女子大学短期大学部, 英語キャリア・コミュニケーション学科, 准教授 (10648356)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スタンス / 表明 / 形成 / ライティング / 英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の大学生である学習者の執筆する英語論文におけるスタンス表明の研究を行っている。2019年度は、学習者がスタンスを表明するプロセスに焦点を当て、インタビューなどを用いながら、質的な分析を試みた。その結果、学部生である対象は、スタンス表明時以前のスタンス形成時の困難が見られた。この部分について、日本語・英語の両方の文章について第一稿、第二稿と修正を重ねるごとに分析をしたところ、スタンスの形成時のゆらぎや、形成したスタンスの表明についての困難など、プロセスとして一部明らかになりつつある。 本研究では当初、先行研究に倣い、スタンスの表明についてを取り扱うことを前提としていたが、熟達した書き手(大学院生以上、多くは英語圏や英語圏での大学院博士学位取得を目指す第二言語話者)を対象とする先行研究とは異なり、初めて学術的な英語ライティングに取り組む日本の学習者を対象とする上で、スタンスの表明以前に、その形成についても明らかとする必要性が明らかとなった。そのため、当初の研究計画を一部見直すこととなった。当該年度は、ここまでの内容を研究会にて発表するに至った。 なお、スタンス表明については、スタンスを形成し、保持した状態で初めて可能なものであると考える。今後、インタビュー結果など質的なアプローチを取り、詳細な記述を用いながら、学部生の英語ライティングにおけるスタンスの形成と表明のプロセスをさらに明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学習者のスタンス表明についての研究をしているが、当初計画では予想し得なかった、スタンス表明ではなくスタンス形成時の困難が見られたため、研究計画を見直すこととなった。スタンス表明については、スタンスを形成、保持した状態で初めて可能なものであると考えるが、対象とする学習者の執筆過程において、スタンス形成に戸惑う様子を確認し、記録した。そのため、当初予想していなかった計画の見直しが必要となった。 これは、先行研究と比較すると対象が異なることに起因すると考えられる。先行研究においては、熟達した書き手(有名なジャーナルに投稿するレベルの研究者)と、そのディスコースコミュニティを目指す大学院生(多くは英語圏での博士学位取得を目指す者)を対象としているが、本研究は日本の大学学部生のアカデミックライティングや卒業論文を対象とするものである。このことから、先行研究で触れられていない階層での困難があることが明らかとなった。 当初予想していなかったことではあるが、学習者の執筆のプロセスに焦点を当て、より詳細に、質的に記述することで、本研究が対象とする日本の大学生におけるスタンス形成と表明について明らかにできると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
スタンスの表明に着目して研究を進めてきたが、質的なアプローチを取り入れたことで、対象としている学習者がスタンス表明以前の、形成の時点での揺らぎや困難を起こしていることが明らかとなった。そのため、今後は先行研究に見られるような、規範との比較によって量的にスタンス表明の表現を価値付けすることのみに留まらず、母語による下書き原稿やインタビューを通して、学習者のスタンス形成とその表明について質的に明らかにしていきたいと考える。 当初予定していた量的アプローチのほか、インタビューや思考発話法などを取り入れて、従来の研究で対象とされてこなかった、アカデミックライティングに不慣れな学習者によるスタンス形成と表明について明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
先行研究のレビューをした時点で、当初予期していなかったスタンス表明以前の、スタンス形成の困難が研究対象に見られ、このプロセスを詳細に記述したのち、当初から予定していたスタンス形成のプロセスを明らかにする必要があると判断したため。
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Research Products
(1 results)