2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on utilizing annotations written on Chinese classics as materials for Japanese medieval history
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17K03060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川本 慎自 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (30323661)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本中世史 / 禅宗史 / 学問史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本国内に現存する漢籍に記された書き入れについて、とくに中世の漢籍講義や注釈活動に遡るものに着目し、そこに含まれる広範な知識の内容を検討するとともに、そのあり方を史料学的に位置づけることによって、中国文学や日本文学の分野にとどまらず、日本中世史研究の史料として活用する方法を確立しようとするものである。 本年度の研究においては、前年度までに引き続き、基礎的作業として蔵書目録等によって書き入れ等を有する漢籍の所在状況を把握することに努める一方で、関東近県および京都府の寺院や史料所蔵機関において漢籍等を含む広範な史料の調査を行い、中世に遡り得る漢籍書き入れの有無を確認した。具体的には、前年度に引き続き埼玉県に所在する禅宗寺院について調査を行い、とくに近世初期の版本への書き入れや写本作成の状況について検討を行った。また、京都府に所在する真言宗寺院に架蔵される漢籍・禅籍についての調査も行った。これらの調査で撮影した史料のうち所蔵者の承諾が得られたものについては、史料編纂所図書室において写真帳もしくはボーンデジタルの形で順次閲覧公開に供している。 また、これらの調査を踏まえて、漢籍から得られる知識についての研究を行った。本年は、禅僧の漢籍をめぐる講述活動のなかでも、とくに室町期の相国寺周辺で見られた唐物「ギョウ瓦硯」に関する言説を検討し、それが北山殿(金閣)を漢・建章宮と重ね合わせる認識を支える文物の一つとなっていることを考察した。また、仁和寺所蔵史料のなかに、「四十九院」と呼ばれる石造物への梵字書き入れをめぐって、戦国期東国の曹洞宗と真言宗との間で宗論があったことを示す史料があることを検討し、その史料紹介を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、中世に遡りうる漢籍とその注釈・書き入れを調査することにより、そこに見える知識を明らかにすることにあるため、研究活動は史料調査が中心となる。しかし、ここ数年の新型コロナウィルス感染拡大状況により、史料調査の実施が先送りとなったものがあり、若干の遅れが生じている。当初の計画では2021年度が最終年度となっていたが、研究期間の延長を申請し、引き続き2022年度に史料調査を行ったが、若干の未実施のものが残っている。このため、所定の手続きにより再延長を申請し、2023年度に引き続き史料調査を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響で未実施となった史料調査については、2023年度に実施できるよう、感染状況に注意しながら準備をすすめる。また、最終年度に予定していた研究成果の取りまとめについても、2020年度に刊行した著書も踏まえて、調査の知見などを補足する形で進めることとしたい。
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Causes of Carryover |
2020年度以降に予定していた史料調査は、とくに関西・中国地方の寺院・史料所蔵機関で行うものについては、新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言・まん延防止措置の発令により、計画の延期・縮小を余儀なくされた。このため、旅費を当初計画通りに執行できず、次年度使用額が生じたものである。 当初計画では2021年度が最終年度の予定であったが、所定の研究期間延長・再延長の手続きを行い、2023年度に引き続き史料調査などを行う予定である。なお、実施にあたっては、感染防止に最大限の注意を払う予定である。
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Research Products
(4 results)