2021 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の水産業および化学工業の発展への藁工品生産の対応に関する研究
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17K03061
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 周 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10339731)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 藁工品 / 叺 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症予防の観点から、予定されていた調査が十分には行えなかったが、本年度には長野県東筑摩郡、南安曇郡、北安曇郡(現 松本市、安曇野市、北安曇郡池田町)での調査をおこなった。この地域は、1930年代に昭和肥料(現 昭和電工)への納入を目的に、藁工品の生産を本格化させた地域であった。前年度までに得た知見に、この調査によって得られたところを合わせて、経営史学会第57回全国大会の自由論題報告において、「大日本人造肥料による叺の調達-東上総地域への関与を中心に-」を発表した。これは昭和肥料による硫酸アンモニア生産の開始が、従前の産地以外にも肥料用叺を生産する地域を必要とし、これに応じた地域の農村経済に大きな影響を与えたことを論じたものである。 また、本研究での調査によって得られた情報をもとに、国際漁業学会2021年度大会個別報告として「明治30年代における鰊〆粕の新規販売計画」を発表し、それをもとに論文を作成した。そこでは、藁工品の原料である稲わらの取れ高が、収穫物の多寡とともに、肥料の良否を判断する材料となっていたことを指摘している。 さらに『渋沢研究』第34巻に、論文「東京人造肥料会社創立直前の高峰譲吉」を発表した。これは、日本で最初の近代的な化学肥料会社である東京人造肥料会社の創立の過程を明らかにしたものである。同社の創設と発展は、それまでの漁業や農業向けだけでなく、あらたに化学肥料用としての藁工品の需要をもたらしたものであり、その工場が立地した東京に近い千葉県東上総地域における叺生産の契機となったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度に始まる新型コロナウィルス感染症の蔓延により、東京以外にある史料の調査に困難をきたす部分があり、その結果、事実の確認が十分に進まなくなってしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の感染予防対策に万全を期しつつ、史料調査をすすめ、研究論文の作成・発表をすすめていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の予防の観点から、予定していた調査が十分に行えなかった。次年度は、前年度に行えなかった調査を行い、研究成果のまとめを進める。
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