2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the response of straw products production to the development of the fisheries and chemical industries in modern Japan
Project/Area Number |
17K03061
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 周 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10339731)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肥料叺 / 藁工品 / 化学肥料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1960年代まで一般的な財でありながら、今日では見かけることが少なくなった藁工品の近代における展開を、藁工品の中でも叺に注目して明らかにするものである。主たる研究対象となったものは化学肥料の容器となった肥料叺であり、その中心的で先駆的な産地は千葉県であった。そのため、本研究では千葉県の中でも特に大きな産地であった東上総(長生郡、夷隅郡、市原郡南部)に焦点をあて、その叺産地としての勃興、成長そして東上総内外での競合について検討し、学会報告を令和4年度まで行ってきた。 令和5年度には、千葉県の中でも東上総以外の産地として第一次世界大戦期に勃興した印旛郡本埜村(現印西市)を題材に、先進地域である東上総との比較検討を行なった。その成果は社会経済史学会第92回全国大会において自由論題報告「第一次世界大戦期における肥料叺産地の形成と衰退 -千葉県印旛郡本埜村を事例として-」として経済史研究者に問いかけ、質疑をいただいた。その質疑を反映させたものを学術論文「1910年代の農村副業振興としての肥料叺生産―千葉県印旛郡本埜村における展開と限界―」(『東京海洋大学研究報告』第20号)にまとめ公表した。 同論文を含めたこれまで検討より、化学肥料工業の勃興と成長により叺への大きな需要を惹起したこと、その需要に応えて肥料叺の産地となることができた農村には、農閑期における労働力の有効活用を可能にし、多くの収入をもたらす新しい副業を成立させた。その流通は当初こそ農村近傍の商人を中心に形づくられていたが、しだいに東京の大手の問屋が産地に進出し、産地商人とともに組合を作って流通を支配した。これに対し、大正期には他の産地が、昭和に入ってからは産業組合が対抗し、前者は第一次大戦後の不況の影響でとん挫したが、後者は新しい流通網を形成することに成功した。
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