2017 Fiscal Year Research-status Report
中世の免許・鑑札機能を有する札と職能人の特権保障に関する研究
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17K03066
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
綿貫 友子 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (40314447)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 札 / 免許 / 鑑札 |
Outline of Annual Research Achievements |
11~16世紀の「札」(何らかの目的で必要事項を記した木片・紙片・金属片などを「札」と総称する)およびそれに準ずる関係史・資料を収集し、そのなかで免許・鑑札機能を有すると考えられる所持・携行する札を主対象として、発給、受給関係から職能者の職能にかかる諸権利の認定や保障内容、支配関係、経済活動と対象地域などの実態を分析・検討すべく『平安遺文』『鎌倉遺文』他史料集から関係史料を抽出、集積し、編年で整理・分析する作業を継続した。 初年度の作業の主体は、本課題の研究遂行上、基本となる調査台帳に相当する編年目録作成であり、前掲の史料集を主体に、年次を追って史料を通読するとともに東京大学史料編纂所、国立歴史民俗博物館などのデータ・ベースでの検索機能なども活用し、関係資・史料を抽出してそのデータを集積した。本課題の研究実施期間においては11~16世紀の関係史・資料を悉皆的に調査することを企図しているが、29年度は対象として11~14世紀の史・資料の検討を優先した。 また、上述の作業と並行して中世史研究に関する新刊の論考だけでなく先行研究の未確認分を探索し、本課題に関連する情報を追加・補填し、研究を遂行するうえでの情報量の充実に努めた。作業を進めるなかでは、古代の木簡においても過所機能を有するものをはじめ、許認可に関わる内容を記した事例が複数確認されることから、それらとの関連性も重視する必要があることを実感し、基礎知識を修得するために併せて古代の木簡に関する主要な研究書を講読した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の本課題申請時に在職していた前任校から平成29年4月、現任校に異動し、申請段階では考慮していなかった諸般の雑務処理や研究・教育環境の大きな変化への対応に多くの時間を割かなくてはならなかった。また、慮外の家庭の事情が加わり、結果的に物理的な研究時間が減少し、エフォート40%の確保が出来なかった。当初予定していた宿泊をともなう史料調査や、研究会出席などが実施出来ず、机上での作業が専らとなり、データ収集を主に文献講読を並行して行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の事情から初年度、予定通りに消化出来なかった本課題の分析・調査の基礎とすべき編年目録の作成作業を急ぐ。『南北朝遺文』『戦國遺文』『大日本史料』などを主に14~16世紀の関係史・資料の収集・整理に重点を置き、随時、編年目録の内容充実を図りながら目録の概要を提示出来るように努める。初年度の遅滞を挽回する必要から研究時間の捻出と効率的な作業を工夫し、個々の抽出資料については、抽出段階での分析・検討の精度を高め、事後の補足・再確認による重複を極力減らす。免許・鑑札機能を有する所持・携行する札の受給は、職能者の存在形態、支配と不離の関係にあることから、中世職能人に関する先行研究で紹介された事例をもとに同時代や周辺地域での類例や関連史・資料を探り、研究書の注や索引なども有効に活用し、同時代史料関係史・資料の効率的な探索と抽出を行う。 また、本課題に直接かかる研究報告ではないが、9月に学会(中世都市史研究会、於徳島県阿南市)での個別報告(依頼題目/仮題「紀伊水道内海世界の交流と物流」)を予定しており、石清水八幡宮神人の活動に言及することから『石清水八幡宮文書』などにも取材することで本課題の追究にとっても有益な情報が得られるものと考えており、その作業成果も反映させたい。
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Causes of Carryover |
購入を予定し、予約発注していた図書が29年度内に刊行されなかったため次年度使用額が生じた。当該図書は30年度刊行予定で、計画通りの予算執行が可能と思われる。
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Research Products
(1 results)