2018 Fiscal Year Research-status Report
中世の免許・鑑札機能を有する札と職能人の特権保障に関する研究
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17K03066
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
綿貫 友子 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (40314447)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 札 / 鑑札 |
Outline of Annual Research Achievements |
11~16世紀の「札」(木片・紙片・金属片・布帛などの総称)およびそれに準ずる関係史料、なかでも免許・鑑札機能を有すると考えられる所持・携行する札に着目し、自治体史資料編をはじめ史料集・報告書等から関係史料を悉皆的に収集し、所在・法量・形状・素材・発給年月日・発給者・受給者・保障内容・交付や検札の手続き・効力などについて調査、整理する作業を前年度に引き続き行った。また、京都府立山科郷土歴史資料館、滋賀大学経済学部附属史料館、兵庫県立歴史博物館、和歌山県立博物館などで惣村関係の木札、酒造関係の鑑札、川船関係の鑑札など課題にかかる中近世の木札を閲覧し、調査した。 口頭報告として、13世紀前期、境界表示を目的とした札の事例については、「紀伊水道内海をめぐる物流と交流」中世都市研究会徳島大会(於徳島県阿南市ひまわり会館、2018年9月2日)で、15世紀後期、伊勢海や瀬戸内海で徴税を行う前提とされ、礼銭の支払と交換に交付されたと考えられる札については「徴税と札」戦国史研究会2月例会(駒澤大学駒澤キャンパス、2019年2月16日)として研究成果の一部を紹介した。前者については同題の論稿として『中世都市研究会編 港津と権力』(仮題)所収予定、山川出版社、後者については要旨『戦国史研究』(号数未定)を投稿中で、2019年度内に刊行予定である。他に「八幡置銭をめぐって」(『三重県史だより』中世通史編第34回掲載予定)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上半期は、関係史・資料の収集を優先し、自治体史など、机上で行う検討はほぼ予定通りに進めることが出来たが、遠征をともなう史料調査は諸般の事情から時間を確保することが難しく不徹底となった。また、下半期については、通常の校務に加え、慮外の学内外の公務が立て込み、特に12月から2月にかけては研究時間の捻出が著しく困難な状態となった。職責上回避することが難しい研究上の依頼(当課題とは直接関わらない原稿や講演他)もあるため、意図に反し、当課題の遂行に支障が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間にわたる当該研究の最終年度にあたり、これまでに収集した関係史・資料を整理、分析し、まとめることになる。収集し得た「札」資料のなかで、特に課題として意図した免許・鑑札機能を有すると考えられる所持・携行する札の事例を抽出し、その発給・受給関係から、商工人を主とするその職能にかかる権利の認定や保障内容、それをめぐる支配関係、経済活動と対象地域などの実態を追究したい。収集したのみで内容分析を十分行えないまま未整理の状態になっている史・資料もあり、鋭意、研究時間の確保に努め、編年的な整理を行ない、編年目録(的概要)にまとめる。それをもとに得られた所見から3年間の総括としての研究成果を学会・研究会等で口頭報告し、複数論稿として発表することを予定している。精度の高い内容を期して取り組みたい。
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