2020 Fiscal Year Annual Research Report
Compound Eye Research on East Asian Printing Culture-Focusing on the Analysis of Characteristics of Paper, Ink, Pigments, etc.-
Project/Area Number |
17K03073
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
渡辺 滋 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (30552731)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 史料学 / 古典籍 / 印刷文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、東アジア諸地域の印刷本、とくに朝鮮本に関する調査を精力的に進め、その成果を数本の論文にまとめた。印刷文化に関する先行研究も整理し、そのうえで地域毎の違いを複眼的な観点から分析する成果も公表した。
具体的には、日本や中国における印刷文化の展開を、多くの先行研究の成果も踏まえて整理したうえで、朝鮮半島におけるその実態を分析した。近代初期に朝鮮半島で蒐書活動をすすめた日本人をはじめとする多くの外国人の証言を探し出し、前近代の朝鮮半島における出版文化の未発達の要因としては、その背景に社会全体の経済的・文化的な未発展があったことを指摘した。社会上位の数%の特権階級のみに所有されていた少数の書籍も、開国期以降の社会的価値観の大きな変化のなかで次第に手放されていくが、それを必要とする階層は、朝鮮半島内には存在していなかった。 その結果、近代における朝鮮本は、開国~20世紀初頭頃まで、外国人にとってかなりの安価に入手が可能なものとなった。とくに現地に赴き、一定の期間、腰を落ち着けて蒐書活動を継続した場合、法外な金額をかけなくても、それなりに充実したコレクションの形成が可能だったことや、戦前の日本人による朝鮮本コレクションの多くは、そうした社会背景によって形成されたものであることなども解明した。
なお以上の成果をまとめるに当たって重要な役割を果たした、山口県立大学に所蔵される寺内文庫の諸史料に関しては、本科研の作業の一環としても、調査・デジタル化を進めつつあり、公開が可能な段階に至った部分から、逐次WEB上で一般公開に踏み切る予定である。また成果の一端は、2021年度(研究期間終了後)に一般向けの講演会などで積極的に公開していく予定になっている。
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Research Products
(4 results)