2021 Fiscal Year Annual Research Report
The Characteristics of Twelfth-Thirteenth-Century Dress Manuals and Their Later Reception
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17K03075
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中井 真木 明治大学, 大学院, 特任講師 (30631329)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 故実研究 / 装束 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は『助無智秘抄』の本文研究と、江戸時代後期の松岡辰方・行義父子の故実研究についての研究を進めた。前者については、昨年度に続いて諸本間の異同等を整理し、校訂および解釈に取り組んだ。従来広く使われてきた群書類従本では欠落している箇所が複数見出され、より当初の形に近い本文を得られた。また、群書類従本では、前半の恒例巻に比して後半の臨時巻に漢字がやや多く使われる傾向が認められるが、より古い様態を残すと推測される写本の臨時巻では、仮名がより多く用いられていることが確認された。なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、2019年度末より新たな写本調査を中断したため、校本の作成はまだ不充分なものとなっており、補助事業期間中の公刊には至らなかったが、今後、追加の調査を進め、成果の公表につなげたい。 後者については、18世紀後半から19世紀前半の江戸の故実家である松岡辰方・行義父子の活動を事例として、近世の有職故実研究において、平安時代末期から鎌倉時代の知識を伝える文献がいかに求められ、利用されたかを検討した。17世紀後半以降、公家の社会において、朝廷文化の再興の動きと連動して、装束書の貸し借りや書写が進み、知識が共有されるようになっていく。更に、18世紀末の好古趣味および考証研究の隆盛のなかで、装束の知識が朝廷社会の外にも広範に共有され、再解釈の対象となっていったのであり、その成果が現在の服飾史の理解に大きく影響を与えていることが、具体的な事例として確認された。松岡父子の故実研究と好古趣味の関連については、国際学会で発表を行なった。
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