2020 Fiscal Year Research-status Report
中・近世公家の知の継承と財政基盤に関する基礎的研究―内記唐橋・東坊城家を事例に
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17K03079
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
佐古 愛己 佛教大学, 歴史学部, 准教授 (70425023)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内記 / 位記 / 東坊城家 / 桑原為政 / 叙位 / 朝覲行幸 / 勧賞 / 諸位記備忘 |
Outline of Annual Research Achievements |
詔勅や位記・宣命など天皇発給文書の調進を担い、古代より朝廷文書行政の中核を担う重職でありながら、本格的な研究がみられない内記と、これを輩出した東坊城家等の菅原氏諸家の実態解明を目指すことを目的として調査・研究を進めている。さらに中世叙位制度研究の一環として、勧賞による叙位の実態について検討し、成果の一部を論文にて公表した。2020年度の具体的な調査・研究内容と成果は以下の3点である。 ①主に京都府立京都学・歴彩館所蔵の菅原氏諸家の史料を博捜し、主に東坊城家の蔵書目録および作者未詳の位記に関わる故実書などを調査した。前者からは、近世後期の東坊城家の蔵書の特色や書写者、入手経緯などについて知見を得ることができた。後者に関しては、五条家傍流桑原為政が天保13年(1842)7月に大内記に補任された時期に著した位記調進に関わる故実書であることなどが判明した。これらの内容については資料紹介として公表した。 ②院政・鎌倉期の朝覲行幸の特質を、特に天皇の拝舞に着目して検討し、政治的意義について考察した。本研究との関連では、中世叙位制度の一部をなす「勧賞」、なかでも朝覲行幸の際に実施される勧賞に関して調査し、当該期の勧賞の「給主」となる人物の特色にかかわる知見を得た。これらの検討に関してはその成果の一部を論文として発表した。 ③過年度からの継続事項として、史料から内記に関するデータを抽出、エクセル形式の表に入力し、平安時代から幕末までの内記補任データベースの完成にむけた作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに行った研究・調査内容の一部を論文(1篇)および資料紹介(2編)として公表することができた。しかしながら、新型コロナの影響により、史料調査が限定的(京都市内のみ)となったことと、研究時間の確保が難しく調査・データベース作成作業に若干の遅れが生じているため、全体的には「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もコロナ感染状況の収束が見込めないため、基本的には関東方面の史料調査の実施は困難と予想される。そのため、史料調査などに関しては予定を若干変更せざるを得ない。これまでに蒐集した史料の読み込みなどにより、内記の実態研究を進める必要があると考えている。特に、早稲田大学図書館所蔵の平田家文書「位記留」等の分析を進めて、近世における内記の活動実態および位記等の作成にかかわる収入について検討を行いたい。また、史料画像データなどの活用も積極的に行い、内記補任データベースの完成に向けて作業を進めていきたいと思う。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、史料調査が限定的(京都市内のみ)となったこと、および研究時間の確保が難しく調査・データベース作成作業に若干の遅れが生じたことにより、次年度使用額が生じた。今後の使用計画としては、調査・研究のための図書・刊行史料の購入と、可能であれば史料調査(東京・千葉)実施費用として使用する予定である。ただし、コロナ感染状況の収束が見込めず、関東方面での史料調査が困難な場合は、代替可能なものに関しては史料の紙焼きを入手することとする。
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Research Products
(3 results)