2022 Fiscal Year Research-status Report
中・近世公家の知の継承と財政基盤に関する基礎的研究―内記唐橋・東坊城家を事例に
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17K03079
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
佐古 愛己 佛教大学, 歴史学部, 教授 (70425023)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 除目 / 叙位 / 内記 / 位記 / 東坊城家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、詔勅や位記・宣命など天皇発給文書の調進を担い、古代より朝廷文書行政の中核を担う重職でありながら、本格的な研究がみられない内記と、これを輩出した東坊城家等の菅原氏諸家の実態解明を目指すことを目的として調査・研究を進めている。さらに中世における昇進制度研究の一環として、叙位・除目制度の実態の調査、貴族社会や政治形態と昇進制度との関係性について検討している。 2022年度は、昨年度に引き続き後三条・白河朝の除目および東坊城家の史料について検討を加えた。具体的には、①後三条天皇作成の儀式書として刊行された『明治大学図書館所蔵 三条西家本 除目書』(八木書店、2021)所収の『除秘鈔』と『無外題春除目』の記載内容について分析するとともに、②『除秘鈔』所収の延久2年度の除目について調査を進めた。また、『魚魯愚鈔』を購入し、記載内容の検討も行っている。さらに、③東坊城家関連史料(早稲田大学所蔵『位記留』、京都府立京都学・歴彩館所蔵『大内記日記』)の内容検討を行った。 ①に関しては、史料の特色や今後の研究課題について、書評「明治大学除目書刊行委員会編/田島公・末柄豊・牧野淳司・南保勝美『明治大学図書館所蔵 三条西家本 除目書』」としてまとめ、②に関しては、調査を進めており、結果をまとめ論文執筆する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
諸事情により新型コロナ禍のなかでの遠方への外出が困難となり、史料調査が限定的となったこと、および研究時間の確保が難しく調査・作業等に遅れが生じているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集した東坊城家関係史料および叙位・除目に関する史料の調査・分析を継続して、同家の活動に関する検討および後者に関しては、後三条朝を中心に摂関期から院政期における叙位・除目研究を進める。 具体的には、①『除秘鈔』所収の延久2年度の除目の全件の調査を踏まえて後三条朝の除目の実態について考察するとともに、古瀬奈津子氏の「天皇と除目」(『古代日本の政治と制度ー律令制・史料・儀式ー』同成社、2021年)を踏まえて、摂関期の天皇と除目の関連性とを比較検討し、院政期における院の人事関与の在り方への影響についても考察する。②①の結果について、論文執筆することを目指す。③東坊城家関連史料(早稲田大学所蔵『位記留』、彰考館所蔵『迎陽館書目之内史館ニ無之分覚書』等)の記載内容の検討を継続実施する。
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Causes of Carryover |
前述の事由により、史料調査が十分に行えなかったこと、および研究時間の確保が難しく調査・作業に若干の遅れが生じたことにより、次年度使用額が生じた。今後の使用計画としては、史料(紙焼き)の購入と、可能であれば史料調査(東京)実施費用として使用する予定である。
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