2019 Fiscal Year Research-status Report
現代都市下層社会と「民衆的知識人」に関する研究‐大阪「釜ヶ崎」の事例を中心に‐
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17K03099
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
能川 泰治 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (30293997)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 都市下層社会 / 民衆文化 / 民衆的知識人 / 釜ヶ崎 / オーラル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前年度からの進捗状況に応じて聞き取りと史資料収集を継続する一方、研究発表と論文作成に取り組む予定であったが、大学の仕事が多忙を極めていることや、自治体史編纂事業の分担業務にかなりの時間を費やさねばならなかったため、本研究課題の取り組みは今年度前半まで中断せざるを得なかった。 しかしながら、年度の後半からは、これまでの聞き取りの成果をふまえた研究発表をすることができた。具体的には、2019年8月3日に同時代史学会関西研究会で、「「釜ヶ崎に生きる」ことのオーラル・ヒストリー-現代都市下層社会の歴史的研究序説として-」というタイトルの研究発表をすることができた。 この報告では、以前から取り組んできた、釜ヶ崎で長らく暮らしてきた人びと、あるいは社会運動や支援活動に取り組んできた人びとからの聞き取りを総括し、高度経済成長期以降の歴史像として何が見えてくるのかを明らかにしようとした。結論としては、企業社会を支えるライフコース(高学歴・終身雇用・中流家庭の形成・通俗道徳の実践など)からリタイアした人びとがたどりつき、経済成長を最底辺から支える使い捨て可能な臨時労働力として企業社会に提供される一方、このような「難民」が「棄民」扱いされることに憤りと疑問を感じて集まった人びとの働きかけを通じて、釜ヶ崎という地域は現代日本社会批判の発信力を養いつつあることを述べた。 また、8月から11月にかけて釜ヶ崎で長らく暮らしながら、さまざまな活動に取り組んできた女性にライフヒストリーを伺う聞き取りを行った。不十分ながらも、これまでの研究調査をふまえた研究発表に取り組み、本研究課題をさらに深化させるための聞き取りに取り組むこともできた。次年度は、これらの発表と調査を、具体的な成果として学術雑誌などに掲載することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学の仕事が多忙を極めていることや、自治体史編纂事業の仕事にかなりの時間を費やさねばならず、年度の前半は本研究課題の作業に取り組むことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を「やや遅れている」と自己評価せざるを得ない現状を真摯に反省し、2019年度の研究発表と聞き取り調査の成果を、学術雑誌などに発表できるように努力する。
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Causes of Carryover |
その他の支出が僅少であったことと、購入予定であった高額の資料集の刊行が2020年度に持ち越されたことが主な理由である。次年度はこの点を反省し、購入予定であった資料集を購入するとともに、これまでの聞き取りの成果を記録集として刊行することも目指したい。
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