2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study on modern city lower social stratum and "intellectual of the people"
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17K03099
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
能川 泰治 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (30293997)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都市下層社会 / 釜ヶ崎 / オーラル・ヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度末の2022年3月18日に、金沢大学内で行われた教員の研究グループが主催するミニシンポジウムで「キューバ・パレスチナ・釜ヶ崎-ある日本人女性のライフヒストリーにみる現代の世界と日本の都市社会-」報告を行った。この報告は、2019年度に本研究課題の研究費助成を受けた聞き取り記録をもとにして、その内容の歴史的位置づけを試みたものである。具体的には、1970年代にキューバ・パレスチナを渡り歩き、そして、日本に帰国してから以後現在に至るまで大阪の「釜ヶ崎」(以下、括弧を省略)と呼ばれる地域で暮らしながら、様々な社会運動に取り組んできた日本人女性のライフヒストリーを紹介し、そのライフヒストリーを現代史の中に位置づけることを通じて、現代(1960年代以降)の世界と日本との関係や、当該期の日本の都市社会(とりわけ釜ヶ崎とはどのような都市社会なのかという点)について考えることにある。 結論としては、当該期の日本の経済大国化は高度経済成長を底辺から支える若者にとって「息苦しい」時代の始まりでもあったということ、そのような若い世代の精神的支柱となったのは、不安定な労働力としての境遇を同じくする者同士の共同性と世界情勢であったこと、そして、そのような日本と世界との関係を考察するには、日米関係や東アジア世界という枠を超える(第三世界を視野に入れる)必要があることを述べた。さらに、そのような社会の雰囲気の中で革命の実現を目指して行動したが挫折・中断を余儀なくされ、しかしそれでも日本社会を問い直すことへの思いを捨てきれない人びとが集い、発信し、「難民」として辿り着いた人や志を同じくする者との関係を再構築する拠点として、釜ヶ崎という地域は存在するということを提起した。
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