2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03104
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
源川 真希 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (10264574)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 都市再開発 / フォーディズム / 新自由主義 / 都市再生 / 中曽根民活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第1に、高度経済成長期から都市再生政策が発動される2000年代までの都市再開発政策について、政府と東京都の史料を調査した(研究目的及び実施計画の1、3)。具体的には国立公文書館において都市再開発法等の立法関係史料、国土交通省(建設省)関係史料、土地政策審議会、国土審議会関係史料を調査し、必要に応じて撮影作業を実施した。また東京都公文書館では、テレポート、中止となった世界都市博覧会など臨海副都心関係史料、1960年代から1990年代における都内の再開発に関わる史料を調査した。 第2に、関係文献、研究論文の調査を行い、研究史の整理を念頭にそれらの読み込みを進めた。また同時代史学会編集『同時代史研究』からサーヴェイ論文執筆の依頼があったため、その準備を行った。 第3に、研究目的及び実施計画4に関わる都市の比較研究という視点について、引き続きニューヨークなど大都市の都市再開発や政治史に関する研究文献や論文の収集、読み込みを行った。とりわけフォーディズム以後の都市という視点の重要性を認識し、それに関わる研究史の整理を試みた。またウィーンについて、その政治経済体制と都市再開発の関係について文献・研究論文などの調査・検討と同時に、都市再開発関係の史料調査を行った。同時にドイツのフランクフルトについても、金融街における都市再開発の進展について調査した。ここは建築規制の厳しいドイツでも例外的に高層ビルが建ち並ぶ区域であり、1990年代から2000年頃に都市再開発が急ピッチに展開されるようになったことから、東京との比較に関して意義ある事例となる。 最後に、以上の作業を進める過程で、2018年8月に科研費課題にそくした書籍の執筆依頼があったため、これまで行った作業を中間的に総括する意味で、1960年代から2000年代の東京の都市再開発と、政府・東京都の政策について年表の整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的及び実施計画1政府・政権党などの政策という点に関わって、都市再開発法制や、1980年代の中曽根民活下の都市再開発、その一方で目的及び実施計画3に関わって、東京都における臨海副都心開発構想などについて、具体的な政策立案過程を検討できたのが大きな成果である。先に述べたように、国立公文書館において、都市再開発法等の立法関係史料、国土交通省(建設省)関係史料、土地政策審議会、国土審議会関係史料を調査した。ここにおいては、政策立案過程における官庁間の対立が存在したこと、時代の変化についての官庁間の認識の相違と政策への反映があったことがわかったのも成果であった。だが、ある法律なり政策なりの主管官庁の史料が残っているあるいは公開されているとは限らないことには注意しなければならない。また東京都についても臨海副都心関係を中心に、政策立案の初期からの史料を入手し、さまざまなプランを概観できたのは成果であった。 また目的及び実施計画4に関わって、外国の都市再開発政策について調べていくなかで、1990年代に一つの大きな転換点があるということがわかってきた。ウィーンにおいては1980年代末から、万国博覧会を開催したいという声があり、1995年に実施する方向で進んでいたが、1991年に住民投票が行われ万博開催は否決される。そこから予定地での再開発が計画されていったことがわかった。それらの事例を明らかにする文献なども手に入れることができた。 最後に、研究論文と書籍の執筆依頼があったことは、これまでの調査の整理を進める上で有益であった。特に、1960年代から2000年代にかけての出来事をクロニクルに整理することができた。 以上より、研究はおおむね順調に進展しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は以下のような柱で研究を進める。①平成30年度までの作業をふまえて、1970年代前半から2000 年前後に至る、都市再開発法制の整備と都市再開発行政の過程、東京における再開発政策の展開について、歴史的に分析・整理する。これについては、すでに出来事のクロニクルを作成し、またそれにあわせて文章化を進めているので、今後引き続き作業を進める。それによって1970年代前半から2000年前後における都市再開発政策の全体像をまとめる。また民間ディベロッパーの動きなどについては、まだ十分作業が進んでいないので、今年度はこれにも力を入れる。東京都に関しては、東京都公文書館の移転とそれに伴う作業により史料が見られないことも想定される。閉館前に必要な作業を実施する。また引き続き、国立国会図書館、国立公文書館などの調査を進める。 ②東京を中心とした日本における都市再開発の歴史的展開と、諸外国の事例の比較についても力を入れる。特にこの間調査を進めたニューヨーク、ウィーンそれにフランクフルトなど諸外国の事例との比較を行いたい。そのため研究文献を読み進めると同時に、現地の都市再開発についての計画などの史料を収集し分析する。その際、都市理論の整理が求められるが、フォーディズムの危機とそれに基づく都市行政の再編という視点の重要性を認識したので、その点からの研究史の整理も進めていきたい。 ③以上をふまえて、研究成果報告書としてまとめるほか、依頼のあった書籍などの形にすべく構想を練る必要がある。またそれを推し進めるのため、都市研究に関わる研究会などでの発表に努めたい。同時に、最終的な目標である歴史学の方法を考えることも今年度の課題となる。
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Causes of Carryover |
調査の日程調整等で、当初の計画との誤差がでたため、次年度使用額が生じた。 次年度に関しては研究課題の3年目となるため、これまでの作業をまとめる作業が必要となる。同時に、政府レベル、東京都レベルの史料調査を継続し、また民間資本の調査を進める。こうして1990年代後半以降の都市再開発の政策的背景を明らかにするため予算を使用する。
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Research Products
(1 results)