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2020 Fiscal Year Research-status Report

地域メディアとしての町村報の構造的分析

Research Project

Project/Area Number 17K03105
Research InstitutionKyoto Prefectural University

Principal Investigator

小林 啓治  京都府立大学, 文学部, 教授 (60221975)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2022-03-31
Keywords村報 / 町報 / 地方自治 / 戦時体制 / 総力戦
Outline of Annual Research Achievements

第1に、未着手の府県について町村報の残存状況の調査を継続した。府県の図書館・文書館などが所蔵するものについてはほぼ完了した。それ以下の行政単位の図書館や大学図書館については、調査が残されている。現在の行政単位以下で所蔵されているものもあるだろうが、今回は行政単位の図書館・文書館の調査を通じて把握できるものに限定する。
第2に、町村報の現物調査については、コロナ禍にあって予定の大幅な削減を余儀なくされたので、近隣のものに絞って調査を進めた。類型化については、発行主体や内容の性格を基準に行った。発行主体については、町村役場がもっとも多いが、まれに青年団もみられる。2018年度に若干分析したように、京都府乙訓郡神足村の場合は小学校校長が編集をになっている。全国的にみてもこれは珍しい事例であることがわかった。京都府の場合、事例が少ないので確定的なことは言えないが、農村部と都市近郊とでは記事の内容にかなりの差があるように思われる。農村部では、生業のあり方とも深く関連して報徳思想の影響が強いが、都市近郊ではそうしたルートよりも、より直接的な形で国家のイデオロギー統合が浸透していく場合があった。その媒体となったのは、例えば神足村では小学校であり、ことに小学校長の果たす役割は大きかった。
第3に、戦後も発行されている町村報を用いて、戦時から戦後への地域社会の持続と変容を一定明らかにすることができた。町村報以外の地域メディアが急速に勃興する中で、町村報も当初は戦前の形式を維持しているが、次第に行政に関わる通知事項が多くなり、主張を展開する記事が減少していく。地域社会の中で町村という紐帯が次第に弛緩していくことを表していると思われる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

インターネット上での検索による町村報の保存状況の調査は可能な限り進めた。ただ、それを補うための実地調査はコロナ禍においては困難を極めた。大学の業務との関わりで、厳しい日程調整を経て調査を予定したが、幾度となく中止を余儀なくされた。実際に保存されている町村報を分析しないと確定的な結論に至らない部分があるので、それについては次年度を期す。
町村報の保存状況については、概要を把握することができた。想定していたよりも、保存状況はかなり良くない。地域的な偏りも大きく、保存されている場合でも実際に発刊された号数を大きく下回っていると思われる。もう少し地域比較などの検討を加える必要があるが、実地調査を除けばほぼ完了している。
町村報の内容分析については、実地調査が困難であるため、遅れが一番大きい。既知の史料をもとに考察を進めていくしかなかった。発行主体の類型差や地域による異同などについては一定の成果が得られている。地理的要因(日本のどの地域か、都市近郊かそうでないか、生業のあり方)などを基準にした類型化は、仮説的な検討が進んだので、次年度はそれを確定していくための調査が必要となる。

Strategy for Future Research Activity

コロナ禍のもとでは、本研究で当初予定していた実地調査を計画どおり行うのはほぼ不可能であろう。そのため調査の対象をできるだけ絞り込み、実地調査を進めるほかない。対象の選定にあたっては、地域差や人口の差、生業の差などに配慮し、できるだけ多様性を確保したい。
実地調査の成果をもとに次の事項について確定していく。
第一に、ことに町村報の内容について詰め切れていない事項、すなわち、①町村報の内容の構成が地域や町村の規模の大きさによってどの程度異なるのか、あるいは差がないのか、②異なる場合には、どこが異なっているのか、その原因はどこにあるのか、などに検討を加える。
第二に、町村報の果たした歴史的役割について考察を加える。その際に留意したいのは、①町村の組織化の論理がいかなるものであったか、②その論理がいかに国家の論理と接合されていたのか、相克する側面があったのか否か、という点である。それによって、1920年代~30年代の歴史的経緯の中で地域社会の結合論理を位置づけることが可能となろう。
第三に、戦後の町村報への連続面と非連続面を確定することが課題となる。戦前的な町村報のあり方はいつまで続くのか、どこに画期が見いだされるのか、を明確化できるはずである。それによって、日本社会の戦前から戦後への移行の一端が明らかになる。

Causes of Carryover

当初予定していた町村報の所在調査が一切できなかった。そのため旅費を全く使うことができなかった。次年度は調査対象を絞り込んで現地調査を3回程度実施する予定である。
また人件費についても、大学院生や学生が登校できない状態が長らく続いたので、使うことができなかった。次年度は、コロナ感染状況をみて、短期集中的に調査の整理を実施する。2人でのべ一週間程度で作業は完結するものと思われる。

  • Research Products

    (1 results)

All 2021

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 『丹後縮緬』が刻む地域社会の歴史2021

    • Author(s)
      小林啓治
    • Journal Title

      フィールド研修報告書

      Volume: 第7号 Pages: 14-16

URL: 

Published: 2021-12-27  

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