2018 Fiscal Year Research-status Report
西播磨小藩・旗本領における領主支配と地域社会構造の歴史的研究
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17K03117
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
今井 修平 神戸女子大学, 文学部, 教授 (00131540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東谷 智 甲南大学, 文学部, 教授 (10434911)
鎌谷 かおる 立命館大学, 食マネジメント学部, 准教授 (20532899)
村田 路人 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40144414)
志村 洋 関西学院大学, 文学部, 教授 (90272434)
郡山 志保 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (00838310)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 三日月(乃井野藩)藩 / 山崎(宍粟)藩 / 平福(松井家)領 / 陣屋町 / 在地家臣団 / 小藩領在地支配 / 西播磨市場圏 / 幕府広域支配 |
Outline of Annual Research Achievements |
5月13日、研究成果の地域還元のため、兵庫県佐用郡佐用町の公民館(乃井野倶楽部)において同地に現存する武家屋敷、小林家と竹内家の古文書を展示解説するとともに、地域住民を対象に「三日月藩(乃井野藩)研究の意義」について講演した。その内容は三日月地域づくり協議会によって100分のDVDに編集され関係者に配布された。竹内家文書については古文書目録を作成した。その一部は翻刻作業を進めている。 7月30、31日に佐用町役場上月支所保管の三日月藩藩庁文書(列祖神社文書)のうち藩日記、家臣団分限帳、駿府城勤番関係文書を写真撮影した。竹内家文書には駿府勤番に随行した詳細な勤務記録があり、藩庁文書と照合することで幕府から小藩に課せられる役負担と西播磨の地域社会の関わりを解明しつつある。また竹内家に残る多数の槍術、馬術、弓術、剣術、砲術の免許目録を全点調査し、近世後期における小藩家臣の武家としての在り方の一端を解明しつつある。小林家文書については、三日月藩年貢米を積み出し港の赤穂の蔵元までの搬送過程を詳細に記録した年貢米積出宰領記録を翻刻した。三日月藩に森家が入部したことにより、池田氏時代以来の播磨新宮経由の網干港積み出しから同族の赤穂藩森家の城下に年貢米搬送路を変更していたことが判明した。 研究分担者はそれぞれ、昨年度に写真撮影した古文書の解読と関係機関への調査を進め、上月村庄屋大谷家文書の免状と岡山・鳥取両池田家の免状との比較により、慶長期以来の池田家に固有の土地支配の特色を解明しつつあり、また平福(松井松平家)領大庄屋田住家文書・三木家文書のうち大坂町奉行所からの公儀触及び訴訟関連文書を抽出して、幕府の広域支配の西播磨への伝達システムの特色についても分析を進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西播磨外様小藩、三日月(乃井野)藩の陣屋元に現存する武家屋敷、小林家・竹内家の屋敷内の伝存していた古文書は前年度にほぼ写真撮影が終了していたが、取り残していた文書と、それらに対応する藩庁文書についても撮影が完了した。竹内家文書については粗目録が完成している。また竹内家文書と小林家文書については現在翻刻作業をすすめつつある。また隣接する宍粟郡の小藩、山崎藩の城下町町会所文書の分析と、平福(松井家)領の大庄屋田住家文書、三木家文書の分析も引き続き進めている。また寛政重修諸家譜を駆使して近世を通じての播磨一国の領主家の変遷とその特色については分析が完了し論文として発表する準備が進んでいる。 竹内家文書の分析を中心に佐用郡三日月地域が近世において纏まった小藩領を形成していたことや、家臣団が在地していたことが近代以降の地域社会の発展に如何なる影響を及ぼしたか、について一定の見通しをつけることができた。また持高10石程度の家臣たちが藩政運営だけではなく、在地の百姓や商人の経営活動にも密接に関わっていたこと、さらには家臣たちの武術の習得が、内陸の小大名であるにも関わらず幕府から要請のあった対外防備の強化政策に対応していることなども明らかとなった。 ただ研究会を1度しか開催出来なかったため、研究分担者が個別に進めている研究成果の共有と全体を総括する議論が不十分に終わっていることは反省として残る。
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Strategy for Future Research Activity |
写真版を元に作成した竹内家文書の粗目録を原文書と照合しつつ内容確認と編集作業を進め、竹内家文書の概要と史料的価値の解説文と重要性の高い古文書の翻刻、及び三日月藩政と地域社会に関する論考を加えて本年度中に『竹内家文書調査報告書』を刊行する。 また研究分担者は個別に論考を執筆中であるが、それら個別の研究成果を集約するため共同研究メンバーに外部からの関連分野の研究者も招いて2~3回の研究会を開催する。 さらに、西播磨小藩領研究によって明らかとなった在地家臣団の藩財政との関わり、在地家臣の領民に対する行政的役割や文化的・社会的貢献など、いわゆる非領国論では説明できない畿内近国固有の領主支配と地域社会構造などの研究成果を学会に提示するためのシンポジウムまたは学会での発表を企画する。最終的には次年度以降になるがその内容をまとめた論文集の刊行をめざしたい。
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Causes of Carryover |
今年度は昨年度に撮影した厖大な量の古文書の分類作成、翻刻作業を在宅もしくは研究室で手分けして行ったため、調査旅費が予想よりかからなかったことによる。次年度は写真版をもとに作成した粗目録について、判読不可能分と撮影の失敗分について再び現地に赴いて原文書と照合し、また調査後に発見された文書の写真撮影と目録作成に調査旅費と人件費が見込まれる。また翻刻作業を行うための人件費と、完成した古文書目録、翻刻史料、解説と解読して史料をもとにした論考を含む『竹内家文書調査報告書』の刊行・配布を予定している。
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Research Products
(2 results)