2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉澤 誠一郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80272615)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中国近代史 / 軍事 / 辛亥革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀初頭の中国政治史を、軍事をめぐる制度と観念に着目しながら、また長い歴史の文脈の中で、再検討することをめざした。具体的には、辛亥革命前後の軍隊をめぐる制度と観念について、基礎史料を収集して分析する作業を進めた。東京において入手できる史料をしっかり把握するとともに、台湾において関係史料の調査を進めた。 発表に至った論考としては「危機のなかの清朝」において、19世紀後半の清朝が如何なる軍事的なインパクトを受け、どのような改革を迫られていたのかについて論じた。そのなかで、曽国藩の軍事思想に注目した。曽国藩は、李鴻章との議論の中で、兵器の改良よりもまず、理念によって統率された軍隊の創出をめざしていた。これは必ずしも保守的な精神論ではなく、20世紀初頭の軍制改革において参照されるような近代軍の精神的基盤を模索したものと理解されうることを指摘した。軍事史においては、とかく技術の近代化ばかりに注目することが多いが、蔡鍔といった20世紀初頭の軍人は、曽国藩の精神論の中に近代軍の特質を見出していたのであった。 また、やはり公刊に至った「近代世界のなかの日本と清朝」では、清朝の歴史的性格を長い射程のなかに位置づけ、両者の統治構造や政治意識について整理した。そのうえで、19世紀末における日本の軍事的擡頭が清朝に何をもたらしたのか、その模倣と反撥の作用の一環として軍事の分野も重要な役割を果たしていたことを考慮しながら、考察を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度には校務繁多のため、研究の進行にやや遅れが生じた。第二年目は、所定の計画を進めるべく研究に傾注することができ、史料収集とその分析を進めると同時に論文作成を進めてきて一定の成果を得ることができた。とはいえ、依然として初年度の遅れを完全に取り戻すに至っていない。研究費について、次年度使用額が発生したのは、そのためである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる今年度は、ひきつづき研究に傾注し、また予定された英国における史料調査も進めたい。その分析を経て、論文執筆に邁進していく。
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Causes of Carryover |
(理由) 初年度の校務の繁忙などのため、計画の実施に遅れが生じ、二年目ではだいぶ予定に追いついたが、まだ完全に追いつけていないので、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度は、最終年度であるから本研究に注力し、所定の計画の達成をめざすつもりである。
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Research Products
(4 results)