2020 Fiscal Year Research-status Report
オスマン帝国近世～近代における社会変容とイスラム知識人（ウラマー）名望家層の成立
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17K03125
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| Research Institution | Ochanomizu University |
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Principal Investigator |
松尾 有里子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 基幹研究院研究員 (50598589)
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| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | イスラーム史 / オスマン帝国 / 知識人 / 女性 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度に予定していた海外調査はトルコでの新型コロナウィルス感染拡大の影響で断念せざるを得なかった。そこで4月～7月は前年度までに収集していたオスマン語史料の整理と解読を中心に、新たな視角から研究テーマに取り組むこととした。それはエブッスード家を含むオスマン近代以降の支配層における女性の教育と社会活動である。オスマン近代化に多大な貢献をした歴史家で行政官でもあったジェヴト・パシャの家系に着目し、その娘ファトマとエミネの受けた教育、その後の文筆、社会活動について検討した。検討の手がかりとしたのは、当時の雑誌、新聞記事（『婦人専門新聞』）や小説『イスラームの女性』などである。その一部はイスラーム・ジェンダー学科研の研究会にて発表し、さらにエミネの論説を現在翻訳中である。また、このテーマに関連する事典項目を執筆した。
7～8月は支配層のオスマン女性について、「オスマン帝国と女性」と題する講演を読売新聞社本社にて4回に分けて行った。8月にその一部を「オスマン帝国史を学ぶ②終わりゆく壮麗王の世紀」『歴人マガジン』にて発表し、社会への還元を行った。また講演の内容をもとに9月からオスマン帝国と女性について、新書の執筆を開始した。
９月～12月は近世～近代におけるエブッスード家を中心としたウラマー家系の社会史に関し英文の論文を執筆した。現在査読審査中である。以上、研究計画に変更が生じたため、研究期間をあと一年延長することとした。現地調査が難しいようであれば、これまで収集した史料をもとに、近世～近代への移行期におけるオスマン帝国の支配層を中心にオスマン社会の変容の過程を検証し、研究成果を本にまとめていく予定である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、令和2年夏に現地調査へ行く予定であった。新型コロナウィルスの感染がさらに拡大し、結局調査は叶わなかった。しかし、日本中東学会、日本オリエント学会やジェンダー研究会、オスマン史研究会など国内の学会や研究会、シンポジウムにリモートで参加し、ジェンダー研究会では発表も行った。以上からこれまでの研究成果の蓄積は着実に進んでいる。ただし、現地調査ができなかったため、研究計画を再考せざるを得ず、研究期間をもう一年延長することに決めた。
現在は当初の予定を部分的に変更し、研究の蓄積を論文(英文、和文の二種)にまとめ発表を準備するとともに、さらにこれらに博士論文の内容を加えて一冊の本にする計画を立てている。すでにその執筆活動に専念している。
新型コロナウィルスの世界規模の感染がいつ終息するか不透明ではある。現地調査が不可能になった場合は、 収集した史料に基づく研究成果を現在準備している本に反映させるとともに、令和2年度から取り組んでいるオスマン帝国の近世～近代の名望家出身の女性と教育、社会活動について、日本で閲読できるオスマン語新聞（デジタル史料）を中心に研究を進めていく予定である。
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| Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で現在までのところ、最終年度に予定していたトルコへの研究調査が行えるかどうかの見通しが立っていない。しかし、令和元年度までに収集し、分析した文書史料群を再度精査し、その成果を11月の日本オリエント学会で発表するとともに、12月に予定されているオスマン史研究の国際セミナーに参加し、報告する予定である。また、現在執筆中の近世～近代のオスマン帝国のウラマーに関する研究書と支配層の女性たちに関する新書を完成させるよう努める。
令和3年度後半期は、もし秋季以降にトルコへの渡航が実現すれば、エブッスード家が勃興したチョルムで研究調査を行う予定である。同家の宗教寄進財産の現存状況を調査するとともに、アンカラのワクフ総局文書館で寄進財産の目録を調査したい。 以上の研究計画、作業を通じて、ウラマー家系を素材に、近世から近代にかけてのオスマン社会の特徴とその具体的な変容の過程を検証することが可能となろう。 また新たに着手した支配層の女性たちに関する研究においては、インターネットで公開されている文書館のデジタル史料を収集しながら、一部聞き取り調査なども実施し、アクセス可能な資料媒体を駆使して研究を進めていく予定である。
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| Causes of Carryover |
令和2年度において新型コロナウィルスの世界的感染拡大により、現地調査を実現できなかったため、研究の延長をした。令和3年度に現地調査費用として使用予定である。もし、実現不可能な事態が生じた場合は、必要な文献の購入と国内での文献調査、及び英文校閲に関わる人件費に充てる予定である。
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