2019 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮北部地域社会史研究―19~20世紀初戸籍史料からの接近―
Project/Area Number |
17K03127
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山内 民博 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40263991)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 韓国史 / 朝鮮史 / 身分制 / 地方史 / 北朝鮮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「朝鮮北部地域社会史研究―19~20世紀初戸籍史料からの接近―」は、19世紀から20世紀初頭にかけての戸籍史料の分析をつうじて、朝鮮北部地域の社会編成および家族構造の特徴と、その歴史的変容を明らかにすることを目的としている。本研究は戸籍史料を中心等する史料の調査収集とその整理・分析が具体的な内容となる。 <史料の調査・整理> 韓国のソウル大学校奎章閣韓国学研究院、国立中央図書館で『咸鏡北道観察府所管各府郡戸案』、『洪城訴牒謄題』など北部地域の戸籍および戸籍関連史料の閲覧・複写をおこなった。また、咸鏡道洪原県に関連して『北征日記』、『洪城誌』、『洪城訴牒謄題』のデータ整理を進めた。 <史料の分析と研究成果の公表> 整理したデータをもとに、『北征日記』、『洪城誌』、『洪城訴牒謄題』の内容を分析し、19世紀末葉の咸鏡道洪原県の社会秩序について分析した。その成果を『環日本海研究年報』第25号(2020年3月刊)に「19世紀末葉朝鮮北東部地域の社会秩序―咸鏡道洪原県の儒士・武士・富民」として発表した。19世紀末の咸鏡道地域の新式戸籍では「職業」に「儒」と記す者が多い点が特徴となっていたことから、日記・地誌史料を利用して咸鏡道洪原県の社会秩序を「儒士」・「武士」・「富民」に注目・検討したものである。19世紀末葉の洪原県では儒教的教養を身につけ科挙応試をめざす儒士・儒生の層が形成され、儒教的秩序とでもいうべき世界が展開していたが、このような儒士的世界は19世紀に入って武士層の儒士への転換、富民層の参入によって生まれていたことなどを明らかにした。これまで検討されることの稀だった19世紀後半期の咸鏡道地域の社会秩序に関する研究として重要な成果であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
韓国および国内での史料の調査・収集、史料集の購入など、順調に進んでいる。 また、史料の分析についても『北征日記』、『洪城誌』の検討結果を公表できた。 ただし、学外研究者を招いて年度末に開催する予定であった本研究課題に関連した研究会は、新型コロナウイルスの感染拡大のため中止した。
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Strategy for Future Research Activity |
引きつづき、当初の予定どおり、国内外での史料の調査・収集、史料集の購入をおこないつつ、史料の分析、研究成果の発表をすすめるが、新型コロナウイルスの状況によって随時変更する可能性がある。 史料の調査・収集については、出張が可能となれば、国内では東洋文庫等において戸籍史料および関連史料の調査をおこなう。韓国ではソウル大学校奎章閣韓国学研究院・国立中央図書館等において戸籍史料・関連する各種記録類などの調査をおこなう。 史料の分析については、『亀城郡戸籍』(1898年)等の戸籍、および地域秩序と関連した請願・訴訟史料の整理・検討をおこない、研究成果の発表につなげる。 また、昨年度開けなかった本研究課題に関連した研究会は状況に応じて開催与否を検討する。
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Causes of Carryover |
図書の購入などの結果、わずかな残額が生じた。次年度、物品費(図書購入費)にあてる予定である。
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