2020 Fiscal Year Research-status Report
18・19世紀モンゴル語年代記の記述内容の変遷に関する研究
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17K03139
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
井上 治 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (70287944)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東洋史 / モンゴル史 / モンゴル語年代記 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に終了することができなかった、17世紀成書のモンゴル語年代記五種のモンゴル語テキストを電子化(ローマナイズ化)した上で、それらの間の構造上の異同を把握する作業を終えた。この作業は、上述の各年代記の各種写本・刊本のテキストを対照して校訂テキストを作成しつつ進めることが理想的であったが、研究の進行が遅れているため、ウランバートルで出版された古写本を、統一した方法でローマナイズする方針に切り替えた。各年代記の構造はすでに先行研究によって大枠が示されているので、意図的に細かく分解することを心掛けたが、細かく分解したぶん、五種の年代記間の異同を比較対照した一覧表に端的にまとめきれていない。この作業のかたわら、以前から難航していた、18・19世紀成書モンゴル語年代記の諸写本の複製を内モンゴル自治区ならびにモンゴル国の文献所蔵機関より入手することを断念し、財団法人東洋文庫が所蔵する、サンクトペテルブルクのロシア科学アカデミー東洋写本研究所所蔵モンゴル語文献マイクロフィルムに収められた18・19世紀成書モンゴル語年代記諸写本を入手した。また、既刊になる印行本と影印本の入手もあらかた終え、各年代記の内容構成の分析に着手した。また、日本ではほとんど研究されていない、19世紀の成書が多くを占めるブリヤート語年代記の研究を組み込むことで、思うように進捗しない18・19世紀成書モンゴル語年代記の研究に新展開を図ろうと、東洋文庫所蔵のマイクロフィルムの複製を入手したが、それらに先行して書かれた年代記の調査が必要であるため、サンクトペテルブルクとブリヤート共和国のウランウデを訪問する予定であったが、コロナ禍により訪問がかなわず、研究の新展開は果たせていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
18・19世紀成書モンゴル語年代記の最良の写本の複製を入手して研究を進める当初の研究の方針を大きく転換し、国内で入手あるいは購入できる写・刊本を利用することにしたため、従来の遅延を幾分かは挽回することができた。しかし、新展開を図るためのブリヤート語年代記に関する研究がまったく進展しなかった。当初の目的にかかる研究はそれまでの遅れをやや取り戻したところまでに至ったので、やや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
17世紀成書のモンゴル語年代記五種のローマナイズと18・19世紀成書モンゴル語年代記の写本複製入手にかなりの時間を費やしたことに鑑み、18・19世紀成書モンゴル語年代記の内容構成分析のためのモンゴル語テキストのローマナイズを行わず研究を進めることを適切な時期に判断する。ブリヤート語年代記の研究に必要な写本はすべて海外に所蔵されている。海外調査に適した夏季休業期間にコロナ禍が克服されなければ、ブリヤート語年代記の研究を当初の研究に組み込むことは断念する。
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Causes of Carryover |
目的とする海外出張調査と複製入手(購入)が可能ならば、その旅費のために用いることとする。
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Research Products
(2 results)