2021 Fiscal Year Research-status Report
Oasis dwellers in the Structure of Nomad Nation: The Case of Junghars in the Process of Collapse
Project/Area Number |
17K03141
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
小沼 孝博 東北学院大学, 文学部, 教授 (30509378)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中央ユーラシア / 中央アジア / 天山山脈 / ムザルト峠 / 交通 / ジューンガル / モグール・ウルス / カシュガル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続き、本年度も本研究課題の基礎となる海外での史料調査が実施できず、すでに収集済み史料の読解に注力した。また、所属校の新型コロナ・ウイルス感染症への対応措置にしたがいつつ、感染状況が改善した時期を見計らって出張し、東洋文庫等の国内機関で短期間の史料調査を実施した。 本年度の具体的な成果として、昨年度実施の研究報告の内容にもとづき、天山山脈を越える幹道であったムザルト峠の交通を検討した「ムザルト峠を越えて:天山南北交通史序説」を『東方学』第143輯に公表することができた。本論文では、考察対象の時期をポスト・モンゴル期からジューンガル期に限定し、ムザルト峠の交通と管理、及びそれによって結びつけられた北の遊牧社会と南のオアシス定住社会の相関を論じた。そのなかで、北方の遊牧国家ジューンガルが、ムザルト峠を通じて貢納物・商税・人的資源(商人、農奴)などオアシス社会が生み出す富を吸い上げ、国力の充実をはかっていたことを明らかにした。本テーマについては、ジューンガル崩壊/清朝征服後(1759年~)を対象とする続編も執筆予定である。また、時代はややくだるが、本研究課題に関連して重要な史料の一つであるムッラー・ムッサー・サイラーミーの『ハミード史』の序論について、史書の引用・参照方法の面から検討する研究報告をおこなったが、当該史料で参照されている「ガンジャン」という中国史料が明清時代に複数編纂された『綱鑑』と総称される漢籍群を指すことを特定し、その一つである王世貞『綱鑑會纂』を所蔵する広島大学中央図書館で調査を実施した。そのほか、18世紀末の清朝治下のカシュガルとコーカンド・ハン国との関係を考察した論考を大学紀要上に公表し、中央アジア史関連書籍の新刊紹介の執筆をいくつかてがけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度同様、地球規模での新型コロナ・ウイルス感染拡大の影響をうけ、予定していた国内外での史料調査、学会発表を取りやめざるを得なかった。学術論文の執筆、学会・研究会での成果報告の面で進展した部分があったが、なお昨年度以来の遅れを十分に回復できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の実施期間は、当初昨年度(令和3年度)までであったが、それを1年間延長することとした。また、対面だけではなく、オンラインによる学会・研究会での発表に、より一層積極的に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、本研究課題を推進する上で不可欠な海外調査が実施できず、また関連資料の出版も少なかったため、1年間の研究期間の延長を申請した。次年度は年度末に史料調査と共同研究を兼ねた海外出張を予定しているが、旅費での執行が難しい場合は、英語論文にかかわる翻訳・校閲料、資料のデジタル化などに充当することにしたい。なお、2022年度を最終年度とし、さらなる延長はおこなわない予定である。
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