2018 Fiscal Year Research-status Report
「近代」移行期の東アジアにおける知識人の人的ネットワーク形成に関する調査と研究
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17K03142
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
崔 蘭英 常磐大学, 人間科学部, 准教授 (80396803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 スマ子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60793552)
平石 淑子 日本女子大学, 文学部, 教授 (90307132)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東アジア / 近代 / 人的ネットワーク / 交渉 / 交流 / 漢詩文 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究は以下の(1)~(5)のように進められた。 (1)資料収集:2018年9月に、韓国国立中央図書館、韓国学研究院付属図書館蔵書閣、韓国ソウル大学附属図書館奎章閣にて共同で資料調査を行った。朝鮮の知識人の日本視察関連の文書・詩文・筆談記録など、今後の研究に裨益する資料の発掘ができた。日本国内では、研究グループメンバーそれぞれ個別に早稲田大学図書館、東京大学附属図書館、大東文化大学図書館、国立国会図書館にて資料を調査、収集した。 (2)データベースの作成:昨年度に引き続き、収集した資料を整理し、「燕行使と清の知識人」、「近衛篤麿と朝鮮および清の人々」、そして「興亜会メンバーと清および朝鮮の人々」などのトピックごとにデータベースを作成している。 (3)公開研究会を2回開催:①2019年2月23日に東京大学の月脚達彦教授と東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所の野田仁准教授を講師に招き、それぞれ日朝関係史、露・清関係史の視点から講演をしていただいた(於日本女子大学)。②2019年3月9日に東京成徳大学教授の直井文子氏を講師に招請し、江戸後期の漢文・漢詩について講演をしていただいた(於日本女子大学)。 (4)共同研究会の開催:2018年4月、6月、8月、11月、2019年1月、3月に、計6回の研究会を開催した。研究グループメンバー互いの進捗状況を確認し、情報を交換、共有した(於日本女子大学)。 (5)研究成果の発表:後続項目10で示しているとおり、共同研究者が共著で興亜会・亜細亜協会の朝鮮と清の知識人の関わりについての基礎調査を行い、その一部を研究論文として発表した。また、1880年代に日本に派遣された朝鮮の「紳士遊覧団」メンバーの清国公使館を通して形成される人脈について、学会報告を行った。ほかに、知識人の間に交わされた書簡や手記についてのいくつかの論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は本研究開始して二年目であった。年度始めに以下(1)~(5)の項目にあるように、資料調査や研究会の開催などについて具体的な研究計画を立てた。目標を「一年目に引き続き、十九世紀後半「西洋の衝撃」を受けて、東アジアの知識人が各々どのようなことに関心を示し、それまでの人脈が情報の共有にどのように生かされたかを探求すること」と設定した。概ね計画通りに進めていたが、時間の制約などで充分に実現することができなかったものもあった。これらについては以下で項目別に具体的に述べる。 (1)資料収集の面において、当初計画した資料はほぼ調査できた。また、新しい資料の発掘に努めた結果、未刊の筆談記録などの文献も入手できた。おおむね満足すべき内容ではあるが、明治初期の知識人の文通など、新資料調査の余地はまだ残っている。特に海外の図書館などは利用の制約が多く、閲覧や複写に時間がかかってしまった。この点については今後も継続して資料を調査し、補っていく予定である。 (2)収集した資料を整理し、データベースの作成を行っているが、作業量が多く、予想以上に時間を要した。今後は単純作業を協力者の助力を得るなどして、効率アップを図りたい。 (3)外部の講師を招聘し、公開研究会を三回程度の開催を目指していたが、依頼の都合などで二回にまとめて開催した。 (4)年間六回の定期共同研究会を行うほか、メンバーの間でメールや電話、面談などの形で頻繁に情報を交換し、共有していた。この点につ いては、計画以上に進められており、今後も維持していきたい。 (5)所属学会などでの口頭発表や論文の公表によって、ほぼ計画通りに研究成果を発表したが、より多くの成果を挙げられるよう、今後も努力していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は本研究の最終年度に当たり、これまでの経験を踏まえて、不足を補いつつ、引き続き共同資料調査、研究をさらに効率的、効果的に進めていく所存である。一年目、二年目の研究成果を踏まえて、日⇔清、日⇔朝、朝⇔清といった二国間の交流のみならず、三者が互いに媒介し合う関係から形成された東アジアの人的ネットワークの解明を目指す。また、研究の深化を図るべく、成果をまとめて、残されている課題をできるだけ明確にすることも目標の一つである。具体的には以下(1)~(5)の手順で進める予定である。 (1)資料調査:愛知大学にて東亜同文書院『中国各地調査報告書』等を中心に調査する。 (2)収集した資料の整理、データベース作成を継続して行い、完成を目指す。 (3)定期的に研究会(年間5回程度)を行い、進捗状況を確認し、情報を交換、共有する。 (4)研究成果を所属学会などにおいて口頭発表し、あるいは論文として公表する。 (5)研究成果を広く公表し、意見を求めるため、「東アジア知識人のネットワーク形成と詩文」(仮)をテーマにシンポジウム(ワークショップ)を開催する。共同研究者の崔蘭英、北原スマ子、平石淑子および連携研究者月脚龍彦、野田仁がそれぞれ文学的な視点、朝・清外交関係の視点、興亜会を中心の日・清・朝間、自由民権運動と連動しての日朝関係、ロシアから見る東アジアという視点からアプローチするほか、関連分野の研究者の参加を依頼し、より良い研究成果を出すよう、推進してしていく所存である。
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Causes of Carryover |
2018年度は「研究実施状況報告書」項目「7.現在までの進捗状況」に記してあるように、資料調査にはまだ行う余地が残っている。また、データベース作成に協力者の助力も必要と思われる。そのため、次年度使用分として繰り越させていただいたものがある。 したがって2019年度は人件費として一部使用するほか、神戸大学や北京にての資料調査に必要な費用として使用したいと考えている。
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Research Products
(9 results)