2018 Fiscal Year Research-status Report
10~19世紀華北における碑刻を中心としたアイデンティティ変容に関する社会史研究
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17K03147
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
飯山 知保 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20549513)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 華北 / アイデンティティ / 碑刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年7月26日から8月3日にかけ、山西省北部と東南部でそれぞれ碑刻調査を行った。前者では、大同市内、大同市新栄区、左雲県、右玉県で網羅的な調査を行い、新栄区得勝堡とその周辺では、明代の城堡およびそれに付随する馬市における「モンゴル」「漢」との交流について、碑刻を収集・解読し、あわせて聞き取り調査を行った。同様の調査を、左雲県三屯郷范家墳村、同県雲興鎮潘家墳村、同県管家堡郷保安堡、右玉県殺虎口博物館、同県白頭村許将軍墓地、同県右衛城、および同県ゴウ家墳村でも行った。中でも、范家墳村とゴウ家墳村では、15世紀以来、「モンゴル」「漢」が交雑する中で、碑刻がアイデンティティの維持・変化に及ぼした影響について、有意義な聞き取り調査を行うことができ、あわせて若干の文献史料の実見もできた。その後、山西省東南部の高平市と陵川県において、人民大学の劉未准教授(考古学)とともに、11世紀以降の寺廟の建築様式の変遷を、碑刻の内容・様式の変化とともに考察し、当地における祖先祭祀空間の変遷を調査した。 その一方、調査の成果にもとづき、次のようなシンポジウムで研究発表を行った。International Symposium“Designing Voices and Letters: The Mongols as an Empire of Communication,” Room 570 Surugadai Memorial Hall, Chuo University, Japan, July 1, 2018; 「十至十三世紀不同政権間信息流通及其政治功能」工作坊, 北京大学静園二院208会議室, 北京: 中華人民共和国(中国語), 2018年10月20日; ワークショップ「宗族と水利から華北の「村」を再考する」,京都: 大谷大学慶聞館K403, 2019年2月9日.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査の対象の選別はおおむね順調に行われており、調査対象であった山西省でも、所期の成果をあげることができた。その一方で、中国の研究者からの情報により、碑刻の移動についても、事前に知ることができ、調査当日に対象がみつからないというような問題は起きなかった。事例の収集も順調に進んでおり、今年度も同様の調査の遂行に注力する。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の通り、山西省・陝西省における現地調査と、学会発表を並行して行う。また、新たに情報を入手した、寧夏回族自治区の事例についても、情報の収集を継続し、可能であれば調査を行いに赴く。そして、関連する研究報告の実施と、論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
現地調査に要した費用が、当初の見込みよりも少なかったため。今年度は現地調査の回数が昨年度よりも多くなる見込みであり、そのために使用する予定である。
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