2021 Fiscal Year Research-status Report
10~19世紀華北における碑刻を中心としたアイデンティティ変容に関する社会史研究
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17K03147
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
飯山 知保 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20549513)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モンゴル支配 / 華北 / 碑刻 / 祖先伝承 |
Outline of Annual Research Achievements |
海外渡航が不可能な中、これまでの調査で得た資料の整理・分析とその発表に注力した。その結果として、次の研究書の出版契約を得ることができ、2023年の春に出版されることが決定している。Tomoyasu Iiyama, Genealogy and Status: Office-Holding, Kinship, and Hereditary Master-Servant Relations in North China under Mongol Rule, Cambridge (Massachusetts): Harvard University Asia Center, February, 2023. 本書は主に12-16世紀を対象の時代とするが、とくにchapter 5で碑刻の通時代的な再利用のあり方を論じ、本研究計画の前提条件となる知見を導き出している。また、上記の研究書の内容の一端を、次の論文として提出した。2022年10月に出版予定である。飯山知保,「モンゴル支配下の中国と多民族国家―官位獲得をめぐる諸相―」,『岩波講座世界歴史 第10巻 モンゴル帝国と海域世界 12~14世紀』, 東京: 岩波書店, 2022年10月. さらに、オンラインで中国・日本で次のような講演・研究発表を行った。飯山知保,「族群政治与科挙社会;《ling一種士人》研読会」, 北京大学中国古代史研究中心, 騰訊会議(中国語), 2021年6月19日; 飯山知保,「“先塋碑”興亡所示的北方社会変動和延続性」,《日中文化学論壇》2021年度海外学者論壇, 騰訊会議(中国語), 2021年10月21日; 飯山知保,「華北の祖先伝承における元代の記憶」, 第二回元朝史研究会, Zoomでの開催, 2021年12月4日.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査が不可能な中、孔夫子旧書網などで、族譜・地方史・回顧録など、非常に現地性の強い資料の収集を行った。例えば、甘粛省ショウ県の汪氏に関しては、現地調査で収集する予定であった族譜や『ショウ県史資料』といった資料を、東京にいながら入手することができた。これらの資料の分析により、18-19世紀の地方志編纂事業が、人々の祖先伝承の変化に直接的な影響を与えたことがより明確となり、将来的な現地調査をさらに効率的に行うことができるようになった。コロナ禍による中国入国が正常化する目処は立っていないが、正常化のあかつきには、すぐに研究を軌道にのせる準備はできている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究の論文化、オンラインでの資料収集を継続して行ってゆくほか、中国での状況の変化に注目し、現地調査の機会を逃さないようにしてゆく。また、台湾の入国はおそらくハードルが低くなると考えられ、上海図書館を代替する形で、中央研究院などでの族譜・地方志調査の可能性も積極的に追求してゆく。
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Causes of Carryover |
海外渡航が不可能な中、現地調査の費用が予想以上に余ったため。
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