2021 Fiscal Year Research-status Report
The Historical Formation of Nationalism in China during the Early Period of the Cold War
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17K03149
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鄭 成 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授(任期付) (20386668)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナショナリズム / 愛国主義教育 / 社会主義思想の受容 / 思想的変容 / 教育手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1950年代、新しく誕生した中華人民共和国に新たなナショナリズムが形成された。当時のナショナリズムが長くわたり、国民の自国認識と対外認識のあり方に影響を及ぼしつつあった。本研究は、当時のナショナリズムの形成過程を考察し、その特質の解明を目的とする。 2021年度は、以下の二つを考察した。一つは、中国共産党政権のプロパガンダに協力する著名な文化人が社会主義思想を受容した過程を考察し、その受容を左右した要素を分析したものである。もう一つは、朝鮮戦争を機に小中学校をはじめとする教育現場で高まった愛国主義教育ブームの実態を考察し、当時の教育者らがどのような理念、そしてどのような手段を講じて学生の愛国主義精神(この時代のナショナリズム)の向上に努めたかを分析したものである。 前者は具体的に、映画監督の蔡楚生に焦点を当てて、本人が政治性を強調する文芸政策に順応したプロセスを考察し、その順応を促した要因を価値観、職業生活、情報環境、生活待遇、家族関係から分析している。研究成果は論文にまとめて『アジア太平洋討究』43号に掲載されている。 後者は具体的に、中央の教育部と地方の教育当局が発行する教育関係の専門誌などを利用して、愛国主義教育の実態への考察を通じて、当時のナショナリズムが浸透した原因について、二つあるとの結論を出している。一つは、中国の悠久の歴史、伝統文化と屈辱な近代が主体となる歴史的資源が、国との一体感と誇りを喚起する材料として大いに活用されたことである。もう一つは、本論文で明らかにされた一連の手法が使われ、まるでトレーニングを行うように愛国主義の理念を生徒の心底に植え付けていたことである。研究成果は、『社会科学研究』73号に掲載している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基盤Cが開始して以来、青年知識人、著名な文化人、小中学校の愛国主義教育という複数の側面から、ナショナリズムを鼓舞する当時の教育、プロパガンダ及び社会的環境を考察し、こうしたなかで人々の考え方や心境がいかに変容し、最後に社会主義イデオロギーを受容したかという歴史的過程を考察してきた。 コロナの影響で中国での資料調査が予定通りに展開できなくなったため、ネットを経由して資料を収集する方にシフトすることで対応した。研究者同士の協力を得て、いろいろな制限のなかでなんとか資料収集を展開することができた。 ネット経由の資料収集は予想以上の時間がかかったため、全体の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは政権が推進するナショナリズムを鼓舞するプロパガンダを、国民側がいかに受容したかを考察してきた。残りの一年間は、政権側がいかなるビジョンをもってこのようなプロパガンダを展開したかを主な考察対象とする。 それを終えた後、ナショナリズムのプロパガンダをめぐって、推進側と受容側という二つの視点から総合的に論じる論文をまとめたい。
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Causes of Carryover |
研究用のノートパソコンを購入する(入手した電子データの閲覧と整理用)
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Research Products
(6 results)