2017 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦期におけるオセアニア華僑の動態構造研究
Project/Area Number |
17K03151
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
菊池 一隆 愛知学院大学, 文学部, 教授 (00153049)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 中国近現代史 / 第二次世界大戦 / 中国抗日戦争 / 太平洋戦争 / 華僑 / 抗日献金 / 日本品ボイコット / オーストラリア軍 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、研究が極めて少ない第二次世界大戦期のオセアニアの華僑、特にオーストラリア華僑の実態と構造解明に本格的に着手した。特に、29年度は計画通りオーストラリア華僑に焦点を合わせ、オーストラリアのキャンベラにある国立図書館、ビクトリア州公文書館、ダーウィンの議会図書館、及び大学としてはメルボルン大学図書館、シドニー大学図書館、チャールズ・ダーウィン図書館において関連史料収集、書籍、論文を調査した。各種の華僑関係英文史料、文書、新聞史料、及び研究書籍、雑誌論文を多く入手するという大きな成果をあげた。 2、これらの史料に、すでに台湾などで入手していた国史舘、中央研究院の史料などを組み合わせ、分析を加え、まずオーストラリア華僑の起源、歴史を明らかにした。その後、集中的に第二次世界大戦期を中心に華僑の移動、抗日動態を解明した。華僑個々人にも焦点をあわせ、オーストラリアで入手した伝記などを梃子に彼らの各種動向、とりわけオーストラリア軍として参戦した実態に迫った。 3、上記各都市・地域の華僑街、華僑博物館などで現地調査をし、研究に魂を入れる作業をしたが、大学業務の関係から24日間という短期間であったため、ブリスベン、タスマニア、パースを調査することができなかった。 4、今年度は論文「オーストラリア華僑」の外、小論として「中南米華僑の動態」についてすでに公表したが、今後、これらをさらに強化する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1,計画通り、第二次世界大戦期のオーストラリア華僑の史料調査、現地調査、及び研究をおこない、関連する多くの英文史料、書籍、新聞史料、雑誌史料を入手した(ただし国民党有志で出していた『民国報』を各図書館などで探し続けたが遺憾ながら未入手)。この結果、論文「オーストラリア華僑」を書き上げ、発表した。今後、これを補強し、著書『第二次世界大戦期のオセアニア華僑』(仮題)の重要な柱とする。 2,各地の華僑博物館、軍事博物館、華僑街で現地調査、各種聞き取りをおこない、多くの研究のヒントを得た。特にオーストラリア華僑の背景である当地の戦時期の状態や日本軍による爆撃状況など理解を深めることができた。その上、オーストラリア華僑と世界各地の華僑についてまだ不十分であるが史料も一定程度入手したので、さらに研究を進めたい。 3,オーストラリア華僑とニュージーランド華僑の関連、共通性と差異については、オーストラリア側から考察を試みたが、まだ不明点が多い。ほとんどニュージーランド華僑の実態がほとんどわからないことに起因している。ニュージーランドに関しては、次年度のテーマであり、本格的に解明を進めるつもりでいる。 4,華僑関連研究として、前述の如く小論文「戦時期の中南米華僑―メキシコ・キューバ・パナマ・コスタリカ」を発表し、華僑研究を一歩進めた。 5,前回科研費(平成22年~25年)でアメリカ、ハワイ、カナダ各華僑などについて各論文を公表した。本年度推敲、分析、新史料で補強し、かつ結論を導き出し、拙著『戦争と華僑続編』を完成させた。汲古書院から2018年5月出版予定(現在三校中)である。
|
Strategy for Future Research Activity |
①今後、ニュージーランド華僑の史料調査収集、現地調査などにより研究を本格化させ、論文を完成させる予定である。ニュージーランド華僑研究は管見の限り皆無に近いと考えられる。だが、シンガポールなどで私が入手した戦争当時新聞がニュージーランド華僑に若干触れられており、まずその読み込みを進める。 ②第二次世界大戦期を中心にニュージーランド華僑研究を本格化させる。そのため、ニュージーランドのオークランド、ウエリントンなどの各大学、研究機関、国公立図書館などで、華僑の位置、特色、中国抗日戦争支援の実態に関する史料を調査収集する。また、華僑博物館、軍事博物館、華僑街で現地調査をおこなう。海外旅費はこれに充てる。また、スムーズに研究を進めるため、協力者・通訳を必要としており、謝金はこれに充てる。 ③ニュージーランド華僑に関する史料は自費や学内研究費で台湾に行った時、国史舘などで少ないが調査収集しており、外枠は把握している。これら史料も再度読み込むと同時に、今回、ニュージーランドで調査収集した史料でさらに深化、進展させる。オーストラリアやイギリス、北米との関係も果たしてどうなっているのか。 ④補強史料は東洋文庫、国会図書館、東京大学東文研などで調査収集する。国内旅費、史料コピー、焼付費などはこれに使用する。また、華僑・戦時関係の日本語・中文・欧文各図書・史料集などを購入し、実証、理論化を図る。 ⑤夏期休暇、冬期休暇を利用してまずは論文「第二次世界大戦期におけるニュージーランド華僑の抗日動態と構造」(仮題)を発表する。こうして、戦時期の世界華僑動態を実証的に解明し、構造分析、理論化する。将来、オセアニア華僑の単著出版を目指したい。
|