2017 Fiscal Year Research-status Report
北朝隋唐諸政権と多元的社会-「府兵制」下の地方軍府と地域社会を中心に-
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17K03154
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
平田 陽一郎 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (50353280)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 北朝 / 隋唐 / 府兵制 / 地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1)北朝・隋唐期の「府兵制」下で設置された地方軍府とその周辺地域社会との相互関係について、碑刻史料等の分析によるミクロな事例研究を積み重ねることで、(2)律令の規定する均質な社会像とは裏腹に、当該時期の中国社会が呈した極めて多元的な様相を解明するとともに、(3)「府兵制」が、この多元的な中国社会を統合に導くに止まらず、唐王朝を世界帝国へと羽ばたかせることが出来た最大の要因が、同制度の宿した「遊牧軍制」的性格に他ならなかった点を明らかにする、ことを目的としている。 なお、本研究は、北朝・隋・唐時代の軍事・外交史を専攻してきた申請者が、個人で遂行する研究である。したがって、時間・費用ともに困難の大きい現地調査による未公開史料の調査等は敢えて行わず、その分、先行研究の成果を丹念に押さえることと、すでに公刊されている厖大な新出石刻史料を中心とする史料群の新たな活用とを積極的に進めていくことを基本的な方針としている。 この方針に基づいて、平成29年度には、軍制関係研究論文の収集と学説整理、および関連する石刻史料の解読・分析を集中して行う計画であったが、その計画どおりに、多数の先行研究と石刻資料を複写ないし購入することで入手し、読み込むことができた。初年度にあたる当該年度は、もっぱらこうした基礎作業に従事することを想定していたが、そこで得られた知見の中から、上記(3)の目的に沿ったものをまとめて研究発表を一度行い、同じく(1)の目的に関わる成果は雑誌論文一編にまとめて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度に当たる本年度には、軍制関係研究論文の収集と学説整理、および関連する石刻史料の解読・分析を計画していた。どちらも時間を要する地道な作業であり、またチェックすべき先行研究と石刻史料は年々増加を続けているので、多少の計画の後れにも対応できるように、初年度1年間という十分な時間を確保しておいた。したがって、進捗状況に遅れはないし、計画にはなかった研究発表・雑誌論文の執筆もできた点では、むしろ進んでいるといえるかもしれない。しかし、参照すべくして未だ確認できていない研究・史料も残されているので、「(2)おおむね順調に進展している。」と評価しておく。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始初年度に得られた情報をもとにして、第2年度の30年度には、主に唐代の折衝府と周辺地域社会の相互関係を論じた研究を発表し、唐帝国支配下の社会の多元的様相を明らかにし、つづく31年度には、前2年度の成果を踏まえて、多元的社会の統合から世界帝国へと飛翔した唐帝国を支えた「府兵制」と、そこに宿る「遊牧軍制」的特質を解き明かす論考を発表するという、当初の計画どおりに研究を推進していく。初年度に行った研究発表と論文執筆で、計画の一部を先取りしてすでに実施済みであるが、研究計画は変えずに、さらに成果を追加していきたい。
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Causes of Carryover |
年度末の旅費の執行を中止したことなどにより若干の残額を生じたが、翌年度分として請求した助成金と合わせて、図書の購入や旅費として使用する計画である。
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