2017 Fiscal Year Research-status Report
Statements and communication in 12th century Ayyubids on the use of letter documents
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17K03157
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
柳谷 あゆみ 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (90450220)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アイユーブ朝 / ザンギー朝 / イブン・アルアスィール / 書簡 / カーディー・アルファーディル / イマード・アッディーン・アルイスファハーニー |
Outline of Annual Research Achievements |
アイユーブ朝期の書簡及び同時代資料と研究書を英国とレバノンにて収集した。英国ではケンブリッジ大学図書館にてカーディー・アルファーディルの書簡集の撮影と内容の確認(書簡数・概要など)を行い、オックスフォード大学ボードリアン図書館ではイマード・アッディーン・アルイスファハーニーの『シリアの稲妻』の現存写本の撮影、内容確認を行った。 レバノンではベイルートのドイツ東洋学研究所と市内書店にて資料と研究書の収集を行った。 アイユーブ朝期の書簡資料では最も現存点数が多いカーディー・アルファーディル起筆の書簡集の内容整理を開始した。外交書簡と個人書簡とに大別される彼の起筆書簡のうち、29年度は個人書簡(特にイマード・アッディーン・アルイスファハーニーとの往復書簡)の内容を精読し、文体と形式、書簡の用向きの特徴等を確認した。さらに、アイユーブ朝期との対照材料となるマムルーク朝期の書式マニュアルであるイブン・ファドル・アッラー・ウマリーの『高貴なる用語の解説』について、共同研究に継続して参加し、同資料の翻訳・研究を進めた。 また、アイユーブ朝期の一次資料であるイブン・アルアスィール『光輝あるアターベク王朝の歴史』の二種類の校訂(ドゥ・スラーン校訂、トゥライマート校訂)について、現存写本と同時代の別資料との比定によって検証を行い、現存写本に後世の加筆が含まれることを確認し、加筆の出典についても見通しをつけた。この資料研究の成果を論文として発表した(柳谷あゆみ「イブン・アルアスィール著『アターベク王朝モスルの諸王の歴史』写本(仏国立図書館蔵ARABE1898 旧番号ARAB. 818)再考」『東洋学報』99(1) 91-118頁、2017年6月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集については、主要な写本資料を英国にて収集することができた。また、翌年度の収集開始を考えていたレバノンでの収集を前倒しで始めることができた。 レバノンでは、ドイツ東洋学研究所と書店で研究書、一次資料の収集を進めたが、事前にアポイントを取っていた研究協力者のレバノン帰国が遅れたため、同所内のデータベースの概要説明は次回に先送りとなった。 書簡資料と同時代資料の分析に関しては、翌年度の成果報告を考えていたアイユーブ朝期一次資料の分析結果の一部を、年度内に論文の形で公表できた。また、対照材料となるイブン・ファドル・アッラー・ウマリーの資料についても、共同研究参加により、順調に訳出・分析が進んでいる。 アイユーブ朝期の書簡資料の分析は、難解な文章が多かったこともあり、当初予想よりは整理できた点数が少なかったが、個人書簡(イフワーニーヤ)に対象を絞ったことで徐々にペースは上がってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は29年度に精読を開始した個人書簡(イフワーニーヤ)の分類と分析を進め、国内外の学会において中間報告を行う。
資料収集に関しては、欧州・中東地域での写本・研究書の収集を継続する。収集地にはベイルート・カイロおよび英国・ドイツを候補として立てており、治安状況を考慮したうえで秋季に今年度の収集地を決定し、冬季に出張を実施する。
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Research Products
(2 results)