2018 Fiscal Year Research-status Report
近世近代移行期環大西洋世界におけるユグノー・ネットワークの影響
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17K03163
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 杉子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80324888)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ユグノー / ネットワーク / 歴史協会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、この科研のテーマである18世紀後半から19世紀にかけてのユグノー亡命者の子孫の活動について、平成29年度に引き続き、ユグノー亡命者の子孫らによって設立された救貧委員会およびユグノー・ホスピタル所蔵の史料調査(英国サリー州キューにある英国国立文書館内のユグノー文庫所蔵)および史料分析を進めるとともに、ユグノー・ホスピタル(英国ロチェスター)に隣接して建設されたユグノー博物館での会合およびフランス・ユグノー協会が運営した国際ユグノー協会の会合に参加することができた。特に、ユグノー・ホスピタル所蔵の史料を読み進めることにより、アーサー・ジロー・ブラウニングというユグノーとヴァルド派の子孫が、歴史学会としてのユグノー協会設立に貢献したことが確認できた。また、フランスのランスで行われた国際ユグノー協会の会合では、英国と同じく、19世紀に、子孫たちの間に自分たちのアイデンティティを模索する歴史意識が生まれ、ユグノー教会堂の再建等が行われたことが確認できた。しかし、一方では、フランスのユグノー教会の信者は激減し、歴史協会としての活動も滞りがでてきているように思われた。子孫たちが中心となってになってきた歴史協会の活動にも現在のヨーロッパの変化が影響している様子がうかがわれた。イギリス・ユグノー協会とオランダのユグノー関連史料(ワロン教会が所蔵)については、史料紹介をまとめたが、これは今年度の『歴史学研究』で8月頃に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は校務が忙しく、1週間弱の海外調査を3回行うにとどまった。それでも、それらの機会にイギリスのユグノー協会の活動に2回出席するなど行なったが、新たに史料調査を行う時間はほとんどなかった。ユグノー協会の設立にかかわった。特に、歴史協会としてのユグノー協会の設立に深くかかわったと推察されるアーサー・ジロー・ブラウニングという人物について、調査を行う機会が得られなかったのは、残念である。
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Strategy for Future Research Activity |
ユグノー協会設立にかかわったブラウニングとそのネットワークについて、調査を行いたい。2019年6月初頭にイギリスに調査に行き、その際に、現在のユグノー協会理事長バーバラ・ジュリアン氏およびユグノー研究家のロビン・グィン氏に面会し、助言を仰ぐ予定である。また、アーサー・ジロー・ブラウニングは何冊かのパンフレットを残しているらしいので、それらの調査も行いたい。
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