2019 Fiscal Year Research-status Report
近世近代移行期環大西洋世界におけるユグノー・ネットワークの影響
Project/Area Number |
17K03163
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 杉子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80324888)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ユグノー / ユグノー協会 / ヴァルド派 / 歴史的学術団体 / イングランド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度/令和元年度は、この科研のテーマである18世紀後半から19世紀にかけてのユグノー亡命者の子孫の活動について、前年度に引き続き、ユグノー亡命者の子 孫らによって設立された救貧委員会およびユグノー・ホスピタル所蔵の史料調査(英国サリー州キューにある英国国立文書館内のユグノー文庫所蔵)および史料 分析を進めた。これまでに、アーサー・ジロー・ブラウニングというユグ ノーおよびヴァルド派の子孫が、歴史学会としてのユグノー協会設立に貢献したことを確認したが、彼の一族であるジロー家が、イングランド南部ケント州の都市ファーヴァシャム(Faversham)において、影響力を持つようになっていたことを発見した。6月にはファーヴァシャムの教区教会を訪問し、教会の持つ資料の調査を行なった。そして、19世紀に町が爆薬生産で繁栄し、爆薬工場を中心に市民の活動が活発であったことを学んだ。アーサー・ジロー・ブラウニングは町の名士として、積極的に複数の自発的結社の活動に関わりながら、ファーヴァシャムの歴史の研究も判明した。19世紀は、イギリス各地で歴史協会が成立したことが知られているが、ブラウニングもその中で位置付けられるだろう。そして、そのような人物が、ユグノー協会の設立に尽力したわけである。残された科研の研究期間においては、19世紀の「歴史意識」の高まりの中で、ブラウニングを中心に市民レヴェルでの歴史学的学術団体の成立とイギリスを超えたそれらの団体のネットワークについてを検討していきたい。 なお、6月のイギリス滞在中は、ユグノー史家ロビン・グウインとも意見交換を行うことができた。しかし、3月に再度、イギリスで研究調査を行う予定であったが、コロナウィルス感染拡大で断念せざるを得なかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度は2020年3月にイギリスにおいて調査研究を行い、6月の調査で得られた情報の確認・さらなる調査を予定であったが、コロナウィルス感染拡大の影響で断念せざるを得なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度はユグノー協会の設立に貢献したブラウニングが、ファーヴァシャムの地域社会の様々なヴォランタリ・アソシエイションに参加したことが確認できたので、それらの活動を調査・精査することにより、19世紀の「歴史意識」の高まりが市民の間でどのような形をとったのか、具体的に明らかにしたい。ブラウニングの活動のうち、ユグノー協会は、現在でも学術団体として活動しており、その背景を知ることは、イギリス人の「歴史意識」のあり方を理解する鍵となるだろう。特に、ブラウニングを中心に市民レヴェルでの歴史学的学術団体の成立とイギリスを超えたそれらの団体のネットワークについてを検討していきたい。
|
Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大の影響で、3月に予定していたイギリス調査をキャンセルした。コロナウィルス感染が収束したら、再び、調査の計画する。
|
Research Products
(1 results)