2019 Fiscal Year Annual Research Report
Acephalousness and leadership in the ancient Greek Democracy
Project/Area Number |
17K03164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋場 弦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10212135)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 無頭性 / アテナイ / 民主政 / リーダーシップ / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に於いては、これまでの史料調査および研究文献調査の成果を総合し、「無頭性」の原則を維持しながら、アテナイ民主政はどのように運営が可能であったか、また「無頭性」の原則の下で政治におけるリーダーシップはどのような形を取っていたか、という根本的な問いに、最終的な解答を与えることに努めた。具体的には、ヘロドトス、トゥキュディデス、および伝アリストテレス『アテナイ人の国制』などの古典史料、およびアッティカの地方行政組織の末端であったデーモスにかかわる碑文史料(『ギリシア碑文集成』1巻3版、2-3巻2版など)の史料分析によって、アテナイ民主政はどのような文脈で個人としての指導者(リーダー)を必要とし、どのような場合にはそれを必要としなかったのか、という角度から探求を行った。その結果、まず(1)民会や500人評議会における集団的意思決定の場に於いては、かならず意思決定の主体は「デーモス(市民団)とブーレー(評議会)は以下の通り決定した」という定型句で表され、最終的な決定の責任は市民団・評議員という集団であったことが明記される一方で、(2)それら意思決定に際して具体的な議案を提出した人物は個人として特定され、「誰々が提案した」「誰々の意見」「誰々が助言者」という定型句によって明記されたことが、P.J.Rhodestとともに確認された。このように都市国家の立法過程においては個人としての発案者・責任者が明確に意識されていた一方で、(3)行政および司法の場においては、役人集団(アルカイ)および裁判員集団(ディカスタイ)の意思決定は、一貫して個人としての代表者・責任者を意図的に立てない形式が好まれたことが判明した。
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