2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03167
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
野村 真理 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (20164741)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホロコースト / ミンスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、バルト3国や西ウクライナとの比較を念頭におき、ベラルーシ・ソヴィエト社会主義共和国の首都ミンスクにおけるホロコーストの特徴を、(1)ホロコースト以前のユダヤ人と非ユダヤ人の社会的関係、(2)ホロコースト期のユダヤ人とコミュニスト抵抗運動の関係に焦点をあてつつ明らかにすることである。 本年度は、昨年度中に収集した史料や文献資料の読解を進め、その結果、上記(1)については、社会主義共和国に移行後のベラルーシでは、国策として反ユダヤ主義撲滅キャンペーンが展開され、特に社会主義教育を受けた新世代のあいだには、コムソモール等での活動を通じて、社会主義的連帯意識が育まれたこと、この点は、たとえば両大戦間期ポーランドで青少年期を過ごしたユダヤ人の回想記のほとんどが生々しい反ユダヤ体験を語るのとは対照的であることが明らかになった。上記(2)については、ナチ・ドイツに対して抵抗運動を展開したポーランド国内軍やリトアニア人戦線あるいはウクライナ蜂起軍が、反ユダヤ主義的な自民族解放運動であったのに対し、ミンスクのコミュニスト抵抗運動は解放から異民族としてのユダヤ人を排除する論理を持たず、このことは、ゲットーのユダヤ人の救出において倫理的意味を持ちえたことが明らかになった。 以上の知見を論文「ミンスクのホロコースト――ユダヤ人抵抗運動の成果と限界」にまとめ、前篇と後篇にわけて『金沢大学経済論集』第39巻第1号、第2号に掲載した。 他に、私が研究分担者となっている科研費研究(基盤B「ソ連・東欧におけるホロコーストの比較研究」)が主催した国際シンポジウム「ソ連・東欧のホロコースト」(2018年10月28日、早稲田大学戸山キャンパス)で口頭報告「ミンスク・ゲットーの抵抗運動――成果と限界」を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費研究最終年度の前年度中に、研究成果を論文にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、金沢大学経済学経営学系の紀要『金沢大学経済論集』(第39巻第1号、第2号)に前篇、後篇にわけて公表した論文「ミンスクのホロコースト――ユダヤ人抵抗運動の成果と限界」のエッセンスを字数2万字程度にまとめ、査読付き学術雑誌への投稿をめざしたい。 また本研究は、おそらく3年の研究期間内に成果を出すことは困難と予想される第3の研究目的として、戦後ベラルーシにおけるホロコースト認識の解明を掲げていた。この問題は、戦後ソ連の歴史政策という、それ自体非常に大きな問題と密接に関連する。本科研費研究の最終年度にあたる来年度は、この問題にもチャレンジしていきたい。
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Causes of Carryover |
最終年度は研究経費が80万円しか交付されないため、国内旅費の一部を私費で支払い、経費の一部を次年度の海外旅費に回した。
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Research Products
(4 results)