2017 Fiscal Year Research-status Report
Colonial Cover-up: Britain's Destruction of Sensitive Records Worldwide
Project/Area Number |
17K03169
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 尚平 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70597939)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イギリス帝国 / 協力者 / コラボレーター / 隠蔽 / 記憶 / 記録 / 忘却 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二次世界大戦後、ヨーロッパや日本の諸帝国が世界各地から撤退した時、都合の悪い過去の記録がおそらく大量に処分されただろうと想像される。しかし、一体いつ、どれほどの規模で、どのように文書の隠蔽が行われたのかという点については、まだまだ謎が多い。 20世紀のこの時期、イギリス帝国も何らかの形で文書の隠蔽を行っただろうと考えられるが、やはり詳細は謎に包まれている。その中で近年、イギリス帝国が隠蔽したはずの行政文書が、実はロンドン郊外に大量に保管されていたことが判明した。本研究課題では、この新出史料を読み解きながら、イギリスが世界中で行った文書隠蔽工作を掘り起こす。今回分析対象とする文書隠蔽工作は、第二次世界大戦直後に始まって、少なくとも1980年代頃までは継続したと考えられる。その中でも、本研究課題においては、その初期段階、すなわち第二次世界大戦直後の時期にどのような展開があったのかを明らかにする。 本研究課題は、4年計画の個人研究である。その1年目にあたる本年は、本研究課題の作業の基礎を作ることに主眼を置いた。まず二次史料を整理しながら、イギリス帝国全体の中で今回分析対象とする文書隠蔽工作がどのように位置付けられるのかについて見通しを立てた。その上で、他の時代や地域を扱っている研究も参照した。また、文献による調査だけでなく、関連する分野の研究者らとも直接交流をもった。こうした作業を進めながら、イギリス帝国史研究を代表する国際誌から本研究の方向性を提示する論文を発表したところ、世界各地から反響があり、これを読んだ歴史家やジャーナリストらと意見交換を行うことも出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
4年計画の1年目にあたる本年は、本研究課題の作業の基礎を作ることに主眼を置いた。 当初設定した目標と、それについての実施状況は、次の通りである。まず一つ目の目標は、二次史料を整理しながら、イギリス帝国全体の中で今回分析対象とする文書隠蔽工作がどのように位置付けられるのかについて見通しを立てることであった。この点は達成出来た。特に、イギリス帝国の歴史認識や支配の様式、協力者との関係を理解する上で、今回分析対象としている文書隠蔽工作を解明することが重要であるという見通しを得た。 もう一つ目標としたのは、他の時代や地域を扱っている研究を参照することである。この目標も達成することが出来た。特に参照したのは、1980年代以降のイギリスの事例と、第二次世界大戦中の日本の事例である。 また、文献による調査だけでなく、関連する分野の研究者らとも直接交流を持つことも目標として掲げた。この点については、当初想定していた以上の水準で達成することが出来た。というのも、上に述べた作業を進めながら、イギリス帝国史研究を代表する国際誌から本研究の方向性を提示する論文を発表したところ、世界各地から想定していた以上に反響があったのである。これによって、論文を読んだ歴史家やジャーナリストらと意見交換を行うことも出来た。 以上まとめると、これまでのところ本研究計画は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目においては、1年目に引き続き二次史料の整理を進め、さらに新たな一次史料の収集と整理にも着手する。
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Causes of Carryover |
次年度において重要な支出を必要とする調査が予定されていることに鑑み、当該年度の支出を抑制したため。
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