2019 Fiscal Year Research-status Report
Colonial Cover-up: Britain's Destruction of Sensitive Records Worldwide
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17K03169
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 尚平 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70597939)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イギリス帝国 / 公文書管理 / セイロン / スリランカ |
Outline of Annual Research Achievements |
4年計画の3年目にあたる本年は、2年目までの成果に基づき、一次史料の本格的な整理と検討を行った。特に中心的に検討したのは、イギリス国立公文書館に所蔵されている「移送文書群」である。移送文書群は、20世紀の中葉から後半にかけて世界各地にあるイギリス帝国の植民地で隠匿され、秘密裡にイギリスに移送された文書群である。こうした文書があるということ自体専門家の間でもほとんど認知されていなかったが、近年になってイギリス政府はその存在を認め、イギリス国立公文書館で公開を開始した。本研究計画で検討しているのは、この移送文書群である。 移送文書群は分量が膨大なので、いくつかの方法で史料を整理し、本研究計画にとって重要である可能性が高いファイルを絞り込みながら検討している。本年の検討の結果、次のことが明らかになった。焦点となるのは、イギリス帝国による文書隠蔽工作が、いつ、どこで開始されたかという問題である。これまで一部の論者が唱えてきた説によると、第二次世界大戦を経て、1947年のインド独立と、その後パレスチナからのイギリスが撤退する段階ですでに大規模な文書の隠蔽が行われたという。しかし、本研究計画による一次史料の検討からは、この説を支持するだけの十分な証拠が揃っているとは言い難い。むしろ重要な転換点となったのは、この直後に独立を達成したスリランカ(セイロン)である可能性が高い。とは言え、周辺状況からは従来の説にも一定の説得力があるので、この問題については引き続き慎重に検討を続けたい。さらに、一次史料・二次史料を精査している中で、文書隠蔽工作の実行段階では地中海のマルタが重要な舞台となった可能性があることも見えてきた。 このように実証的な検討を進めるのと並行して、本年は国際学会における研究報告と、雑誌論文の発表を行い、国内外に向けて研究成果を発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り研究テーマについて実証的な検討を進め、国際学会で研究成果を発信したことに加え、さらに雑誌論文の出版を行うこともできたので。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに実証的な検討を進める。特に、イギリス帝国における文書隠蔽工作の初期段階における実行過程の分析に主眼を移す。
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Causes of Carryover |
次年度において重要な支出を必要とする調査を計画しており、本年度の支出を抑制したため。
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