2018 Fiscal Year Research-status Report
シベリアに抑留された満洲の女たちに関する社会史的・ジェンダー史的研究
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17K03172
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
生田 美智子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 名誉教授 (40304068)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シベリア抑留 / ジェンダー / 日ソ戦争 / 満洲 / 占領地 / 引揚げ / 記憶 / 記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度も引き続き積極的に研究活動を行った。9月4-7日ロシア女性史学会・文化人類学会共催の国際会議「19-21世紀のロシアにおける政治的、経済的、文化的アーバニゼーションプロセスにおける市民」(於:ニージニィ・ノヴゴロド)のプレナリーセッションで「日本人女性抑留者の見た日ソ戦争後のハバロフスク」と題して講演し、ロシアや欧米の研究者と知見を交換した。報告は、学会の報告集とリャザン国立大学の紀要№ 1(62) 2019年に掲載された(同一論文なので本報告書の研究成果報告には記載していない)。 2019年2月9日、JSPS科研費 15K03577との共催で、ロシアのジェンダー史研究の第一人者であるプシカリョヴァ・ナタリヤ氏を招待し、国際シンポジウム「非常時における女たち;戦争、動員、抑留、戦後」(於:大阪大学)を開催し、「非常時を生きる女たち:占領地と収容所の日常」と題して報告するとともに、プシカリョヴァ氏の報告「ソ連の女たちと日本人抑留者:非常時の日常生活とジェンダーから見る異文化適応(1945-1956年)」を翻訳し、ロシアのジェンダー理論から見たシベリア抑留を紹介した。その他にリトヴィナ・ナタリヤ「男のいない女たち:20世紀中葉ヴェルホカミエ地方における古儀式派女性たちの運命、信仰と妥協」、ムヒナ・ジナラ「女性と戦争:戦時における女性のアイデンティティ」、伊賀上菜穂「小説の中のロシア系エミグラントと日本人との結婚:『満洲国』の枠組みの中で」、須佐多恵「米国公文書資料(在上海米国総領事館移民申請書)から見た中国の白系ロシア人女性」、李潤澤「終戦直後の李香蘭のスクリーンイメージに見る満洲の影」の報告があり、活発な意見交換が行われた。 2019年2月12日-21日、ワシントンD. C. のナショナル・アーカイブと議会図書館でシベリア抑留に関する資料を調査・閲覧・撮影した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年2月のロシア国立軍事公文書館での調査により、ハバロフスク収容地区から他の収容地区への日本人女性抑留者121名の移動記録を発見することが出来た。従来、女性抑留者に焦点が当てられことはなく、その存在自体も十分には認識されてこなかった。また、史料としても研究者がアクセス出来ない個人登録簿や回想記、当時の新聞以外はほとんど知られていなかった。「捕虜・抑留者業務管理総局」のゆるぎない文書を発見したことで実像の一端を明らかにすることができた。 ハバロフスクでは収容所跡や日本人墓地を訪問し、目撃者から日本人抑留者に関する情報を聞きとり、日本でも元抑留者から聞き取りを行うとともに、当時の手帳や手紙を写真に撮ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2019年度も引き続きモスクワ、ウラジオストク、ハバロフスクで公文書館調査、並びに収容所周辺住民への聞き取り調査を実施し、日本でも元シベリア抑留者の聞き取りを続ける。2019年6月29-30日に東京大学で開催されるThe 10th East Asian Conference on Slavic Eurasian StudiesでパネルWomen and War: Mobilization, Internment and Memory を組織し、また、自身もパネリストとしてDisregarded experience: Japanese women in Siberia internmentと題して報告することになっている。 さらに『セーヴェル』35号に本科研とJSPS科研費 15K03577共催の国際シンポジウム「非常時における女たち;戦争、動員、抑留、戦後」の特集を掲載する。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、最終年度2019年度にはハバロフスクとウラジオストク、加えてコムソモリスク・ナ・アムーレで開催される日露学術シンポジウムならびに円卓会議に出席する予定があり、さらにモスクワでの文書館調査と研究者との知見の交換、ならびに日本国内の抑留生存者調査を予定しているので、多額の旅費が見込まれ、2018年度分と2019年度を合わせて利用する必要があったからであ 使用計画としては、9月8日、ハバロフスク着、全体会議ののち、9月9日、コムソモリスク・ナ・アムーレで円卓会議後、収容所跡を調査する。9月12日、ウラジトストクで開催される日露学術会議で報告する。モスクワでの文書館調査はその前か後を予定している。
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