2018 Fiscal Year Research-status Report
Democracy and Reciprocity: between Public and Private in 4th century Athens
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17K03173
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00289125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レトリック / ギリシア / 公共性 / 法廷弁論 / アテナイ / 互酬性 / 民主政 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)女性にとっての市民権や公共性の意味を考察するための基本資料である伝デモステネス(アポロドロス)『ネアイラ弾劾』を一旦入稿後、さらに改善を加えた。 (2)広島大学史学会(10月26日、27日、広島)において、アッティカの公的言説空間における「伝聞」の重要性を検討するため、伝聞証言とヘロドトスの「アコエー」重視とを関連づける報告をおこなった。報告内容自体はすでに国際学会で 報告済であったが、新たに報告をおこなうことで、国内の研究者に研究内容を公表することができた。 また、公共空間いおいて文書を公示することの意味を探る論稿を、共著論文集に寄稿した。 (3)これまでの研究を一書のかたちにまとめる草稿に加筆訂正を加えた。原稿は、アテナイにおける日常的な人的構造と公的な言論空間との関係性を問うものであり、引き続き2019年度に加筆のうえ、交刊予定である。 (4))公私の関係性をとらえるために情報伝達に注目し、比較のために「メディアとコミュニケーション」研究会を継続して、開催した。関西の若手院生・PDを中心としたメンバーとともに、今年度は計4回の研究会・ワークショップを行い、アテナイはもとより、小アジアの碑文慣行、アテナイにおける奉納という伝達手段、デモステネスの18世紀ヨーロッパおよび日本における受容といった個別のテーマにもとづき、石刻資料、書簡、弁論、それらが公開される都市空間の関係性を踏まえた議論がおこなわれ た。そのかたわらで、古代研究とメディア研究の接点をもつ可能性を探るために、吉見俊哉・佐藤卓己といったメディア研究者の著作についても勉強会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究書・翻訳書の公刊が、計画に比して1年遅れとなった。また、予定していた海外での資料調査も、公務との兼ね合いで2018年度は実施することができなかった。これらは外的な事情によるものである。その代わりに、証言、公示等についての実質的な研究成果が上がっており、総合して、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行は、個人研究と、付随する共同研究によって行われている。共同研究に関しては、2017年度に得られた、書簡という、閉じられた伝達形式による文書が、他都市に伝達され、しかも公開されるという文書の変容と受容について、比較研究を行う可能性をの可能性が導かれた。文字と口承のあいだの関係性についても、研究課題として認 識することができた。これらを受けて、今後、前近代史研究者による拡大的な比較研究を組織する必要性が明らかであるため、研究会の組織について協力者と協議中である。いっぽう、個人研究に関しては、前4世紀アテナイの公私関係についての研究は着々と交刊に向かっているものの、ヘレニズムへの展望において遅延が見られるため、2019年度においては、この方面の研究に着手したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、主として海外調査の延期及び、ヘレニズムの家制度についての研究の着手の遅延による。これらについては2019年度中に着手する。
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