2019 Fiscal Year Research-status Report
Democracy and Reciprocity: between Public and Private in 4th century Athens
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17K03173
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00289125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 互酬性 / 公私 / ギリシア / 感情 / 法制史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、主として、これまでの研究にもとづいて、前4世紀、法廷弁論家の時代の公私関係についての全体像を導くために費やされた。その成果は、2020年4月17日に『互酬性と古代民主制―アッティカ法廷弁論における友愛と敵意』として公刊された。掲載された論稿は、既公刊のものも多かったが、ひとつにまとめるための整頓や再考察を加え、「友愛と敵意」をキイワードにしてまとめることで、公私関係についての研究が、感情史やエゴ・ドキュメントへの切り口を内包していること、アテナイの公私関係が、「敵意と友愛」を軸とする互酬的な共助の論理にたつ公私の連続性と、公私の峻別を併せ持っていたことを明らかにした。 公私の関係性についての検討をヘレニズム時代についても進めていくために、課題の一環として継続的におこなってきた「古代におけるメディアとコミュニケーション」にかんする研究会の対象範囲を前近代史に拡大し、7月、10月、1月(3月は新型コロナウィルス拡大により延期)の4度おこなった。および「碑文の会」と共催で関連碑文に関するワークショップを開催した。また、同ワークショップで、養子縁組にかんする個別報告をおこなった。 また公私関係についての方法論的試みとして進めてきた上記共同研究の成果を、日本西洋史学会小シンポジウムで公開するために、テキスト間関係に注目し、テキストの公開性と公的性格、資料類型との関係について論ずるための準備を進めた。 加えて公的弁論において個人的な「恋(エロス)」がどのように語られているのかについて、検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画で予定していた著書を、2020年4月刊行予定で脱稿した。また公私関係把握のための方法論として重視している、メディアとして前近代の資料を読むプロジェクトに関しても、着実に協働研究を積み重ね、テキスト間関係という新しい切り口を共有するにいたった。これらは当初の予想を超える成果であるといえ、20年度中にシンポジウムで成果を公表する予定である。いっぽうで、ヘレニズム時代にかんする研究代表者自身の新規の研究は、基礎的な準備段階に留まっており、そのための海外出張も、新型コロナウィルスの影響で計画未了となった。これらを総合的にみれば、おおむね順調とみなすべき状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2020年度は、当初予定されていた日本西洋史学会大会が12月に延期されたことに伴い、小シンポジウムの遂行に費やされる。また、新型コロナウィルス流行にともない、12月に来日予定であったパパザルカザス教授の年度内の招へいが困難となるほか、招へい事業については、場合によっては年度内遂行が難しいため、研究期間の延長も含めて今後検討する。 遅れているヘレニズム時代の女性の公私関係については、引き続き取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
単著の校正スケジュールがずれ込んだこと、年度末にCOVID-19の流行拡大をみたことから、海外出張を控えたことにより生じた残額であり、今後状況収束後に、改めて資料収集の予定を立て直し、研究遂行の予定である。
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[Book] 論点・西洋史学2020
Author(s)
金澤周作
Total Pages
321ページ(14-15ページを担当)
Publisher
ミネルヴァ書房
ISBN
9784623088792
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