2018 Fiscal Year Research-status Report
Jurisdiction and regions in early-modern german empire
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17K03175
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
渋谷 聡 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (30273915)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近世ドイツ / 裁判 / 地域 / 連邦制 |
Outline of Annual Research Achievements |
「研究実施計画」に従い、近世ドイツ(神聖ローマ帝国、以下「帝国」と略記)の最高裁判所、すなわち帝国最高法院における陪席判事推挙の仕組みを解明することに、今年度は注力した。 そのための知見を得るために、2回の渡独を行った。第1に、ヴェッツラーの帝国最高法院研究協会主催による研究集会(4月26~28日)に参加して、研究動向の状況を確認することに努めた。 第2に、ウィーンで開催された「身分制代議制議会史国際委員会」の年次大会(9月10~13日)に参加して、「近世ドイツ帝国における裁判と諸地域」と題する報告を行った。本報告では、陪席判事が帝国管区から推挙される方法が、二つの構造から成り立っていることを明らかにした。すなわち、18世紀末の時点で27名の定員を持っていた陪席判事について、一方には、皇帝と9名の選定侯(最有力の諸侯)による個人の推挙権による12名があった。これらは皇帝と最有力の諸侯との直接的なつながりから推挙された。他方には、7つの帝国管区から、地域代表の意味合いを持って選出され、推挙された陪席判事の存在がある。とりわけ、7つの帝国管区から、地域代表の意味合いを持って、陪席判事が推挙される仕組みからは、帝国の諸地域が司法の運営に関与していた、とする「司法における連邦制」として近世の帝国を解釈する仮説的な参照枠の有効性が確認されることになろう。 この学会報告については論文としてまとめ、公表することができている(「近世ドイツ帝国における裁判と諸地域ー18世紀帝国最高法院と陪席判事推挙の構造」『社会文化論集(島根大学法文学部紀要:社会文化学科編)』第15号、2019年、3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の「研究実施計画」では、「帝国管区内の領邦や都市の裁判所が、帝国最高法院に対する法曹の推挙においていかなる業務を担っていたかについて、明らかにすること」としていたが、そこまでに踏み込むことは出来ていないが、その代わりに、前述のとおり、帝国管区における陪席判事推挙における二重の構造を明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、身分制代議制議会史国際委員会の年次大会(7月16~18日)において、「帝国管区内の領邦や都市の裁判所が、帝国最高法院に対する法曹の推挙においていかなる業務を担っていたか」に関して、研究報告を行う。 この報告を踏まえて、国内の研究会でこれを補足する報告を行い、これらをもとにして、最終の研究報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
ドイツの研究状況の確認(意見と情報の交換)に注力してきたため、物品費と旅費にウェートのかかる使用をしてきた。 今年度は、研究報告書を刊行する予定でいるので、次年度使用額については、研究報告書の作成と刊行に充てる。
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Research Products
(2 results)