2020 Fiscal Year Annual Research Report
Jurisdiction and regions in early-modern german empire
Project/Area Number |
17K03175
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
渋谷 聡 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (30273915)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 帝国最高法院 / 帝国クライス / 両宗派対等 / 推挙構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世(16~18世紀)ドイツの神聖ローマ帝国は、300近くにのぼる諸侯の領邦と自治都市からなる、連邦的な国家連合である。帝国に統合をもたらしたのは、首長としての皇帝、帝国議会、行政管区としての帝国クライスなど、帝国の諸機関である。そうした帝国の諸機関のうち、帝国裁判所に関する実態の解明も進んできている。 本研究は、ドイツ本国での研究動向との交流から、とくに「裁判」の問題に焦点を定め、近世のドイツ帝国について、これを「司法における連邦制」として理解する仮説的な参照枠の提示を目指した。具体的には、帝国の司法における帝国クライスの関与の在り方に着目した。すなわち、二つの帝国裁判所のうちの一つ、帝国最高法院(上位機関)と諸地域の裁判機関(下位機関)の間にあった、帝国クライスが担っていた、法曹(裁判官)の「送り出し」(育成と推挙)と「受入れ」(下位機関への異動)の2つの機能について、1871/72年の帝国議会決議などの決定から、明らかにすることを目指した。とりわけ、前者(「送り出し」)の機能との関連から、裁判官の推挙の構造と裁判官相互のネットワーク形成の側面を明らかにすることができた。 前者の課題(裁判官の推挙の構造)については、総勢27名から成る裁判官の定数は、カトリック14名、プロテスタント13名という、「両宗派対等」の原則に従っていた。この27名の裁判官のうち12名は、皇帝と9名の選定侯から、すなわち帝国の上位身分の構成員からの推挙を受けることとされていた。他方で、残りの15名は、帝国クライスからの推挙を受けることとされていた。言い換えると、両宗派対等の原則にもとづく27名が、一方では有力な統治者身分からの推挙、他方では、帝国クライスから、いわば地域代表としての意味合いを含んだ推挙、すなわち、二種類の推挙構造により任命された。
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Research Products
(1 results)