2019 Fiscal Year Annual Research Report
The recognition of Muslims in the kingdoms of Iberian Peninsula and the Papacy in the 13th century
Project/Area Number |
17K03180
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
阿部 俊大 同志社大学, 文学部, 准教授 (60635788)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教皇庁 / ムデハル / ムワッヒド朝 / 外交 / 布教 / イスラーム貨幣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イベリア半島を中心に、キリスト教圏とイスラーム圏の関係の多角的な分析を行った。イベリア半島のキリスト教諸国は征服地のイスラーム教徒住民(ムデハル)を重要な財源と認識し、保護する姿勢を見せた。時に民衆による攻撃が行われることもあったが、王権だけではなく、貴族、また教会さえも彼らを重要な納税者で労働力であると認識し、基本的に保護する姿勢を見せていた。また教皇庁は基本的に各国におけるそのようなムデハルの扱いに介入していなかった。介入する場合も、キリスト教への改宗に関する問題を扱うときや、一時的な怒りに駆られて国王がムデハル追放令を出してしまった際に取り消しの許可を与えるときなど、ごく限定的な場合であった。そこにはムデハルへの敵意は感じられず、むしろ保護する姿勢すら見られた。また、教皇庁はスペイン南部やマグリブ(アフリカ北西部)を支配していたムワッヒド朝(1130-1269年)との間に対等な外交関係を展開し、またムワッヒド朝領内でのキリスト教の布教を支援していた。また、13世紀頃まで地中海交易ではイスラーム貨幣が多く使われ、13世紀中頃からフィレンツェやヴェネツィアの貨幣が代わって優位に立つが、それまでキリスト教圏でもイスラーム貨幣に対して拒否感が示されることはなく、場所によってはその後もイスラームの影響を受けた貨幣が使用された。また13世紀には、アラゴン連合王国がイタリア諸都市と並んでマグリブやエジプトなどのイスラーム諸国との交易を活発化させていた。さらに、聖職者たちを中心に、イスラーム圏への布教が度々企画され、またイスラーム圏との組織的な捕虜交換の動きなども整備されていた。このように、13世紀のキリスト教圏はイスラーム圏を、十字軍やレコンキスタに端的に現れるように時に抗争相手とする一方で、対等な交渉相手・外交相手ともしている様子が明らかとすることが出来た。
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Research Products
(2 results)