2017 Fiscal Year Research-status Report
ハルビンのロシア革命:ロシア革命と東北アジアの在外ロシア世界
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17K03182
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中嶋 毅 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70241495)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 在外ロシア / ロシア革命 / ハルビン / ソ連 / 白系ロシア人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、帝政ロシアの東アジア進出拠点として形成され発展した都市ハルビンにおいて、1917年のロシア革命がどのように展開したのか、そしてその挫折により形成された在外ロシア世界がソヴィエト体制といかなる関係を構築したのか、という問題を同時代の史料に基づいて実証的に分析することを課題とした。本年度は、1917年のロシアの二つの革命がハルビンにおいてはどのように展開されたのかを解明することを主要な課題として、1917年のハルビン革命の歴史を考察した。 この課題の遂行を通じて、以下のような諸点を明らかにすることができた。(1)1917年の二月革命の報が届くや、ハルビンでも革命的気分が急速に高揚した。しかし、二月革命後の政治的不安定の中でロシア本国の経済状況が急速に悪化すると、それと連動してハルビンでも経済状況が悪化し、犯罪の多発や労働運動の深化がみられた。二月革命後の事態の展開は、ロシア本国の他の地方都市と基本的に共通性をもつものであった。(2)一方、ハルビンでは鉄道管理を維持する目的から、旧統治体制の中核であった鉄道管理局長ホルヴァート将軍の権力が一定の制約下で維持された。それゆえここでは、臨時政府の執行機関と自らを位置づけた市執行委員会、労働者と兵士を政治的基盤とした革命勢力である労兵ソヴィエトと並んで、鉄道管理局という旧勢力代表が鼎立する「三重権力」状態が出現した。(3)こうした事情は、ハルビンにおけるソヴィエト権力の樹立にとっての制約条件となった。ペトログラードで成立した人民委員会議は、政治的観点だけでなく食糧確保という経済的要求から性急にハルビン革命を求めたのに対し、現地ボリシェヴィキはあくまで慎重な対応を追求し、最後までホルヴァート管理局長との妥協を図ろうとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題のうち、1917年のロシア二月革命がハルビンではどのように展開され、ハルビンにおける十月革命がいかにして挫折を迎えたか、という問題について研究を進め、当該テーマに関する研究成果の一部を国内学会で発表するとともに論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を踏まえて、ハルビン革命後の混乱からハルビンにソ連勢力が進出進出して在外ロシア世界が変容する時期の歴史的展開を考察することを研究の中心的課題に設定し、これに関連する資料の収集と分析に従事する。この作業とあわせて、在外ロシア人社会の政治的・文化的諸相の特質にかかわる同時代史料を収集し分析する作業を実施する。
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Causes of Carryover |
アメリカ合衆国への出張を実施の予定であったが、大学の職務と家庭の事情により日程調整がつかず出張を取り消さざるを得なかったため、次年度使用額が生じることとなった。 当該費用は、次年度に実施予定の外国出張期間を延長するための費用に充当する。
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[Book] スターリン2017
Author(s)
中嶋 毅
Total Pages
112
Publisher
山川出版社
ISBN
978-4-634-35089-2
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