2019 Fiscal Year Research-status Report
ハルビンのロシア革命:ロシア革命と東北アジアの在外ロシア世界
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17K03182
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中嶋 毅 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (70241495)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 在外ロシア / ロシア革命 / ハルビン / 白系ロシア人 / 在外教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、帝政ロシアの東アジア進出拠点として形成され発展した都市ハルビンにおいて、1917年のロシア革命がどのように展開したのか、そしてその挫折により形成された在外ロシア世界がソヴィエト体制といかなる関係を構築したのか、という問題を同時代の史料に基づいて実証的に分析することを課題とした。本年度は、帝政末期のハルビンにおいて形成されたロシア人教育機関が1917年の革命を経てどのように変化したかを解明することを主要な課題とした。 この課題の遂行を通じて、以下のような諸点を明らかにすることができた。(1)ロシア帝国の国策会社であった中東鉄道会社の付属地では、鉄道建設の当初からロシア人学校に対する需要が起こった。中東鉄道の全面的支援の下で、満洲の地にロシア帝国の初等中等教育制度が急速に整備された。(2)一方、帝国政府の各省が独自に学校を維持管理するというロシア帝国の教育制度がそのまま満洲に移植されたことにより、それが内包した官庁間の対立構造が満洲においても出現することになった。中東鉄道を建設した大蔵省は、大蔵省が支配する鉄道王国を目指したものの、国民教育省は初等中等教育機関の管理を通じて対抗した。さらに自治機関であるハルビン市政庁もまた、教育行政を主導しようとする鉄道管理局と対立した。(3)ハルビンに高等教育機関を求める動きはすでに1917年革命以前に始まっており、革命後に徐々に本格化するものの、ロシア極東ではその地の高等教育機関が中東鉄道付属地の中等教育機関卒業者を受け入れたため、ハルビンの中等教育機関卒業者には進学の機会が開かれていた。しかし極東でもソヴィエト・ロシアによる支配が確立した結果、ロシア本国への進学機会は極度に困難な状況となった。進学機会を求める中等教育機関修了者の切実な願望が、ハルビンのロシア人高等教育機関設立の背景に存在していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題のうち、1917年のハルビン革命の前後で在外ロシア人社会がどのような変化を経験したかという問題を教育の領域において研究を進め、その成果を論文として公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究成果を踏まえて、1917年革命後の内戦期ハルビンの政治的・社会的状況についてさらに考察を深め、ハルビン革命の歴史的意義を考察する論文をまとめる作業を進める。この作業とあわせて、ハルビン革命後の混乱からハルビンにソ連勢力が進出進出して在外ロシア世界が変容する時期の歴史的展開にかかわる同時代史料を収集し分析する作業を実施する。
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Causes of Carryover |
チェコ共和国スラブ図書館への出張を実施の予定であったが、新型コロナウイルス流行によるチェコ共和国入国禁止措置のため出張を断念せざるを得ず、次年度使用額が生じることとなった。 当該費用は、次年度に実施予定の外国出張期間を実施するための費用に充当する計画である。
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